第53話「ダウト」
「そろそろ、生徒手帖の写真を撮り直す時期やな。――八」
「証明写真の顔って、いつも鏡で見てるのんと、まるで違うことない? ――九」
「そうだよね。どこか表情が硬いよね。――十」
「自然な笑顔って、難しいわぁ。いつも、半笑いになるんよね。――ジャック」
「俺は、真顔やのに、怒ってると勘違いされるからなぁ。――クイーン」
「あたしも、眼つきが悪いからなぁ。――キング」
「座布団」
「バレたか」
「分かりやすいよね、南方さん」
「目ぇ泳いでるよ、夏海ちゃん」
「焦ってるのが、丸分かりや」
「仮面でも、被ろうかな。何かあったやろうし」
「中学の卒業アルバムも、結構ひどい写真があるよね。――エース」
「酷くは無うても、おおっぴらに見せたくないものやわね。――二」
「探しとらんで、席に着きや、南方。――三」
「座布団」
「うまく隠せたと思うたんやけどな」
「僕は、気付かなかったなぁ」
「きっと、夏海ちゃんが、三を全部持ってるんと違うかな」
「そうやねん。――四」
「中学の頃は、眼鏡だったから、見られたくないなぁ。――五」
「今は、コンタクトにしてるん? ――六」
「知らんかったんか、西園寺は。――七」
「ずっと知ってるもんやとばかり思うてたわ。――八」
「一週間使い捨ての、ハードタイプだよ。――九」
「座布団」
「残念でした。ジョーカーです」
「嵌められたな、南方」
「引っかかったわね、夏海ちゃん」
「最後の一枚やから、絶対、違うトランプやと思ったのに」
「そうとは限らないさ。勝手に思い込んだら、負けちゃうよ」
「ん? 西園寺の番やで」
「さっきので、手札は出し切ったんやけど?」
「気ぃ付かへんかったわぁ」
「しれっと上がりよって。――十」
「一騎打ちか。――ジャック」
「中学の頃、坊主頭やったよね、春樹くん」
「そうなんだ。ちょっと、見たいかも」
「見せるなや、西園寺。――クイーン」
「座布団」
「残念やったな。クイーンや」
「もう、こうなったらサレンダーや」
「降参、かな?」
「ゲームが違うてるよ、夏海ちゃん」
「しかも、ローカルルールやな」