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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
48/164

第48話「青の狂詩曲」

「外は一面、雪景色。ホテルを出れば、氷点下の世界」

「はるばる来たぜ、北海道って感じやね」

「函館やないけどね」

「それにしても、雪で観光バスの到着が遅れるとはな」

「十メートルどころか、一メートル先も怪しいぐらいの猛吹雪やもん」

「安全運転が、第一やもんね」

「引率の先生にしてみたら、思わぬ足止めやろうな」

「まさか、もう一泊することになるとは思うてへんかったやろうな」

「住吉先生も、ぴりぴりしてはったわ」

「あの無責任男は、相変わらず暢気に構えてるけどな」

「そのことに、イノシシは腹を立てとったで」

「『さすがは、バブル世代は余裕ですね』って、皮肉混じり言うてはったわ」

「そしたら無責任男が、『全共闘とは違いますよ』って」

「ほんで、すかさず鉄の女が、『ゆとり世代のほうが、まだマシね』って」

「世代論でくくるのは、乱暴やと思うんやけど」

「見てる分には面白いし、当事者たちも、見当違いなのは重々承知した上でのことやと思うで」

「多分、そうなんやろうな。知らんけど」

「そうなんと違うかな。話は変わるけど、さっきからピアノの音色がしてるのんに、気ぃ付いてる?」

「あぁ。昨日までは、こんな音はしてへんかったよな?」

「移動するたびに、何度かここに来てるけど、ピアノの音を聞いたんは、今が初めてやわ」

「どこから聞こえてくるんやろう?」

「正面玄関のほうと違うか?」

「ちょっと行って見ようや、秋ちゃん」

「そうしようか、夏海ちゃん。春樹くんも、どない?」

「せやな。ここにいても、することあらへんからな」


「あ、春樹くんたち」

「冬彦くんやったんや」

「退屈だからね。支配人さんに、エントランスのピアノを弾かせてくださいって、半ば駄目元でお願いしてみたんだ」

「そしたら、許可が下りたんやね?」

「そういうこと。僕たちの先生も含めて、お客さんの気が立ってるものだから、かえって歓迎されてね。このスコアも借り物だよ」

「たしかに、リラックス効果はありそうやな」

「ねぇ、他にはどんな曲が弾けるん?」

「初見や暗譜で弾ける曲は少ないけど、これはどうかな」

「どこかで聞いたことがあるわ。たしか」

「音大生が主役のドラマで使われとった曲やったな。タイトルは」

「あかん。喉のここまで出てるんやけどなぁ」

「フフフ。答えに近いのは、東野くんかな?」


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