第46話「駄目押し」
「折りたたみ傘、うちわ、雑誌」
「飴ちゃん、お茶のペットボトル、合格祈願のお守り」
「リップスティック、ハンドクリーム、手鏡」
「ウエットティッシュ、制汗スプレー、ヘアバンド、目薬」
「ペンケース、メモ用紙、ボールペン、ハンドタオル」
「充電ケーブル、小銭、パスケース、ポケットティッシュ」
「よくもまぁ、これだけ詰め込んだもんやな」
「リュックのポケットに、小銭とか目薬を直に入れるのは、考え物だと思うなぁ」
「夏海ちゃんは、ポーチや財布を使わへんタイプなんやね」
「こんな乱暴な入れ方しとったら、肩紐も切れるわな」
「鳳さんに裁縫セットを借りに行くって言ってたけど、遅いね」
「そうやね。どないしたんやろうね」
「まぁ、でも。こんなに派手に破いてしもうたら、買い替えたほうがええんと違うか?」
「あくまでも、応急処置だよ、東野くん」
「あ、これ」
「ん? あぁ、それは」
「懐かしいね。一年生の時に配って回ってた、記者倶楽部のビラだ」
「まだ、うちらも生徒会に入ったところやったよね」
「あの頃は、毎週末に必ず、生徒会室に、部活動認可届を持って来とったな」
「『我々は生徒会が、記者倶楽部を学校の正式なクラブとして認めるまで、断固斗う所存である』なんてね」
「どこで覚えてきたんやら、何に影響されたんやら、よぅわからへんかったわぁ」
「二年に上がって、中之島を引き連れて来た時は、ほんまに驚いたわ」
「まさか、本当に新入部員を確保してくるとは、夢にも思わなかったよね」
「これで諦めるやろうと思うて、提示した条件やったのにね」
「あれが、駄目押しになって、認可せざるを得なかったんやったな」
「根負けだよね」
「あの熱意を、少しでも勉強に傾けてくれたらええんやろうけど」
「無理と違うか?」
「僕も、そう思う」
「そうやろうね」




