第45話「昼下がり」
「はぁ、食堂ねぇ、コンビニねぇ、土日は購買開いてねぇ」
「俺らこんな高校、嫌だぇ、とでも続くんか、中之島」
「模試があると、土日が潰れるから、嫌になるわ」
「まだ、南方はええやないか。明日の理数科目は、受けへんのやろう?」
「そうやけど、一年生より長丁場やで?」
「まだ一年は、文系理系に分かれてへんからな」
「そろそろ、類型選択希望届を提出せなあかんのですよ」
「あぁ、そういえば、今頃やったか」
「秋の仮届けは、何にしたん?」
「国公立文系ですよ、隊長」
「そうか。文系二類か」
「春樹と同じやね」
「それは、耳寄りな情報ですね。会長。要らなくなった教科書は、中之島にくださいね。それでは、この辺で。さいなら」
「さいなら、中之島」
「副長、さいなら。バスは、あと十七分か。はぁ。お腹空いてきたわぁ」
「こっちは、十一分後やな。ほんまやなぁ。早う帰りたいなぁ」
「いつもの購買三人組は? ――おいしそうやね」
「来てないよ。食べずに帰ったんじゃないかな。――お先に、いただいてます」
「いただきます。今日は忙しかったから、冷凍食品ばっかり」
「こっちも、似たようなものだよ。昨日の残りが、ほとんど」
「秋さん、北条さん」
「あ、華梨那ちゃん」
「いらっしゃい、鳳さん」
「お昼、ご一緒してもよろしいですか?」
「ええよ」
「毎回、許可を取らなくても良いよ、鳳さん」
「そういう訳にもいきませんよ。いただきます」
「華梨那ちゃんは、お弁当、自分で作ってるん?」
「凝ってるよね、いつも」
「大したことないですよ。冷蔵庫の余り物です」
「そんなに都合良く、余るかなぁ?」
「まぁまぁ、そう追及したりなや、北条くん」
「ところで、この用紙はご存知ですよね?」
「あ、類型選択の本届けだ」
「もう、そういう時期なんやね。仮届けの時は、どうしたん?」
「私立文系です」
「文系一類か。じゃあ、来年からは、理数科目の模試を受けずに済むね」
「今のうちと夏海ちゃんと一緒やね」
「そうなんですか。それは心強いです」
「楽しそうやな」
「あ、一組の先生」
「理科の先生や」
「先生も、お昼ですか?」
「出屋敷や。覚えてな。朝、行きしなに駅で弁当を買うてきたんや。理科室に電子レンジがあるから、温めようと思うてな。ほんじゃ、邪魔したな」
「さいなら、先生」
「先生、さいなら」
「先生、また月曜日に」
「……あの袋の中身ですけど」
「いや、さすがに」
「幕の内弁当ではないと思うよ」




