第44話「着替え」
「秋さん」
「あら、華梨那ちゃん。どうしたん、その格好?」
「あ、鳳さんや。寒くないん?」
「それが、ジャージを忘れてしもうたんです」
「それは、お困りやね。今日は、二組は体育がないから、うちは持ってへんのやけど、夏海ちゃんは、持ってる?」
「昨日、持って帰ったところや。金曜は、体育がないから、弱ったなぁ」
「もう、これで受けようかなぁ」
「さすがに、それは寒いんと違う?」
「副長に聞いてみようか。あ、でも、男子は嫌か」
「貸してくれはるんやったら、誰でも」
「珍しいな、こんなところで」
「春樹くん」
「春樹。今、体育やったん?」
「あぁ。一組は今、終わったところや」
「ということは、北条くんも?」
「そうや、春樹。冬彦くんを呼んできて」
「冬彦に用やったんか。分かった。すぐ、呼んで来たるわ」
「お待たせ。着替えてたんだ」
「北条さん。そのジャージ、貸してください」
「え、でも、体育で来たあとだから、汗臭いよ」
「北条くん、そんなに汗掻くほうと違うやん」
「鳳さん、これ、どない?」
「……臭くない」
「それじゃあ、お貸しします。あとで持ってきてくれるかな。それとも、放課後に取りに行こうか?」
「月曜日の朝一に、洗うて返します」
「そこまでしなくても良いよ。持って帰ろうと思ってたから」
「鳳さんの好きにさせたら、冬彦くん?」
「華梨那ちゃんの気が済まへんやろうし」
「洗濯させてください」
「わかりましたよ。でも、急がなくても、火曜日まで体育はないからね」
「よかったなぁ、鳳さん」
「華梨那ちゃん。早う、着て行かんと」
「おおきに、先輩」




