第41話「これから」
「後期から三年生が自由登校になって、バスの利用客は、ずいぶん減っとったやん? けど最近、三年生をちらほら見かける気がするねん。何でやろう?」
「センター試験が終わって、国公立の二次試験をどこに受けるかとか、私立や専門学校に行くかとかで、相談に来てるんと違うか?」
「三年生の担任教員も、大変だよね。そうそう、進路希望調査票は、もう提出した?」
「今週中に提出やったな。俺は、まだ出してへん」
「模試を受ける時の参考にする、とか何とか。イノシシが、要領を得ん説明を言うとったわ。あたしも、まだ出してへんのんよ。そういう冬彦くんは?」
「僕も、この通り、まだ白紙。でも、来週には修学旅行だから、先延ばしには出来ないよね」
「行き先が北海道に決まってから思うんやけど、修学旅行先でスキーって、縁起悪いことない?」
「滑るし、転んだり、落ちたりするかもしれへんからか?」
「厄払いだと思えば良いんじゃないかなぁ。試験本番で滑る前に、スキーで滑っておこうって訳でさ」
「その発想は、あらへんかったわ」
「三日目には観光もあるし、滑ってばかりという訳でもあらへんからなぁ」
「話を戻すけど、どうする、これ?」
「模試のデータが、進路予測に使われることを考えると、あまりええ加減なことを書かれへんからなぁ」
「データから進路予測って言われても、台風やないんやから」
「選挙の時の、出口調査みたいなものでもあるね」
「お待ち遠さん。何の話?」
「進路の話。まだ一年近く先やから、ぴんと来ぇへんなぁって」
「それでも、現実の条件を考慮すると、俺は青衣のことがあるから、宅浪覚悟で公立かなぁ」
「あたしも、朱雀のことを考えなあかんから、短大かな。四大やと、朱雀と在学期間が被ってまうし」
「僕は現役で合格したいから、私学も視野に入れようかな。西園寺さんは?」
「うちは、専門学校に行こうかなって」
「勉強がよぅできるのに、もったいない」
「そう言うたりなや、春樹」
「そうだよ、東野くん。まだ、正式決定じゃないんだから」
「そうよ、春樹くん。仮決まりなんやから」
「そうやな。これからなんやな、俺たち」
「そうや。これからや」
「これからだね」
「これからやね」