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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
37/164

第37話「ボディー・マス・インデックス」

「大丈夫、夏海ちゃん?」

「あたしはもう大丈夫やから、秋ちゃんは早う教室に戻り」

「ほんなら、また後で様子を見に来るわね。失礼しました」

「……心配かけてしもうたなぁ」

「無理な食事制限をするから、貧血で倒れるのよ。ホントに、どうしてダイエットって言うと、猫も杓子も食事量を減らすことしか考えないのかしら」

「でも、出演してるモニターの人は、たしかに痩せてはるけど?」

「マスコミの悪影響ね。摂取する量が急に減るから、一時は体重は落ちていくわ。でもね、そうなるとわたしたち人間の身体は、飢餓状態だと勘違いして、脂肪を蓄えていくようになるの」

「そんな、飢餓状態や、なんて」

「決して、大袈裟に言ってるんじゃないのよ。貧困にあえぐ国の子供が、お腹だけ膨らましてるニュース写真や映像を観たことがあるでしょう? 栄養の偏った食事を続けると、遅かれ早かれ、最後にはああなってしまうのよ」

「嫌やわ、そんなん」

「そうでしょう」

「でも、この冬で二キロも太ってしもうたんよ、神崎川先生」

「南方さんの場合、元々が痩せ型なんだから、二キロくらい増えたほうが、かえってちょうど良いくらいよ」

「秋ちゃんより重くて、冬彦くんと同じくらいでも?」

「体重は、他人と比べるものじゃないわよ。ここに電卓があるから、体重をキログラムで入力してちょうだい」

「はい、先生」

「身長は、百六十センチを超えてるわね?」

「はい。百六十二です」

「えーっと。そうすると、南方さんのビーエムアイは二十一弱ね。ほぼほぼ理想の数値じゃないの。何も心配する必要は無いわね」

「失礼します。南方さんは?」

「奥のベッドよ」

「あ、春樹」

「冬彦から聞いたんやけどな。南方、貧血で倒れたそうやないか。もう、何ともないんか?」

「平気、平気。その紙袋は何なん?」

「アップルデニッシュ。さっきまで、一組は調理実習やってん。同じ班になった冬彦が、南方の元気が湧く美味しい物を作ろうって言うもんやからな」

「今週は、パンケーキと林檎ジャムのはずと違うかった? ずいぶんな変貌を遂げたんやね」

「違う意味で変貌を遂げて、西園寺を困らせるなよ。作り立てやから、火傷せんように注意せぇよ」

「ありがとう。冬彦くんにも、あとでお礼言わなあかんなぁ」

「冬彦には、俺から伝えておく。ほんなら、俺はこの辺で」

「まだ次の授業まで時間があるんやから、春樹も食べたらええやん」

「俺が食べてどないするねん、今、血となり肉となるものが必要なのは、南方やろ?」

「こういうものは、一人で食べるより二人で食べたほうが、満足感が高いんよ」


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