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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
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第31話「小麦と小豆の効果」

「副長くんに問題。人間は、聞こえて来た音を恣意に処理して、必要な情報だけを再構築している、という考え方は何でしょう?」

「カクテルパーティー効果」

「大勢の人で賑わう中でも、自分の名前を聞き分けられたり、自分が降りるバス停が放送されると、気付いたりするよね」

「会計さんに問題です。効能の無い薬を処方しても、処方された人がそれを薬だと信じ込むことによって、何らかの改善がみられることは何でしょう?」

「偽薬効果。もしくは、プラセボ効果だね」

「ちなみにですが、不肖、中之島正の合い薬は、葛根湯です」

「次の問題。大勢で作業をすると、一人が出す力が減ることは何しょう?」

「リンゲルマン効果」

「グループで作業すると、自分一人ぐらい全力を尽くさなくても良いんじゃないかと、どこかで思ってしまうよね」

「続いての問題です。誰にでも該当するような、曖昧で一般的な性格をあらわす記述を、あたかも自分だけに当てはまる正確なものだと捉えてしまう現象は、何でしょう?」

「バーナム効果」

「雑誌の星占いは、大抵、どの星座にも当てはまりますよね、ちなみに、中之島正は一月一日生まれの山羊座です」

「心理学の効果は、物は言いようで何でもござれという気がして、今一つ納得できないところがあるんだよねぇ」

「同感です、会計さん」

「二人は、ここに居ったんやね。秋ちゃんは図書室で見掛けたんやけど、春樹はどこにいるか知らん? 一組に荷物があるから、まだ帰ってはないと思うんやけど」

「古典の再試験があるって言ってたから、二組に居ると思うよ」

「ほな、すれ違いやったんやね」

「隊長、その紙袋は何です?」

「楠川駅から山手新道沿いにずーっと行って、コープさんを右にクッと曲がって、商店街をスッと抜けた先をどーっと行ったところに、天パのあんちゃんがやってる鯛焼き屋さんがあるやん? そこの鯛焼き。秋ちゃんにもろうたから、みんなで食べようと思うて。ちょうど四つあるんよ」

「美味しそうだね」

「たしか、某有名人がオーナーをしている人気店とか何とか言うてたような」

「情報通やな、副長」

「それじゃあ、ハロー効果を確かめてみようか、副長くん」

「そうですね、会計さん」

「ここに居ったんやな」

「お疲れ、東野くん」

「会長、お疲れ様です」

「イノシシのテストは、どうやった?」

「事前に範囲は知らされとったし、体調不良で休まへんかったら、受けんで済んだようなものやった。そうや、ここへ来る時に西園寺から聞いたんやけど」

「鯛焼きやろ? ちょうど食べようかと思うとったところや」

「グッドタイミングです、会長」

「はい、東野くんの分」

「おおきに」


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