第3話「関西弁ゲーム」
「助けて、東野くん」
「まだゲームは終わってへんよ、冬彦くん」
「二人して、何をやってたんや?」
「関西弁で喋らないと、ペナルティーを課すって言うんだ」
「埼玉から転校してきて、もう七年になるんやから、ええ加減、関西弁で喋りぃや」
「そうやなぁ」
「東野くんも、南方さんの味方なのかい?」
「よっしゃ。これで二対一やな」
「いやいや。俺は審判をするだけや。参加はせぇへんよ。それに、今のルールだけやったら冬彦が不利やから、もう一つルールを付け足さんと」
「何?」
「公平に頼むで」
「南方。お前は冬彦と逆で、関西弁を喋ったらペナルティや」
「そんなん、無茶やわ」
「はい、一ペナ」
「そんな、殺生な」
「ほんで、どっちが勝ったん?」
「それから五分ぐらい、どっちも喋らんようになってしもうてな。結局、ゲームはお流れにしたんや」
「あのお喋りな夏海ちゃんが無口になるなんて、よっぽど堪えたんやろうね」
「喋ったら最後、うっかり関西弁を使うてまうと思うて、必死に我慢してる姿は、傍で見てる分には、なかなか愉快やったよ」
「春樹くんも、悪趣味やわぁ」
「趣味が悪いんは、南方やろ?」
「そうやろか?」
「自業自得やん。他人にからかわれとうなかったら、他人をからこうたらあかん」
「己の欲せざるところ、他人に施す勿れ」
「その通りや」
「でも、このままやったら春樹くんの不戦勝やん。それじゃ、夏海ちゃんの気が済まへんやろうし、ここはうちらも、今から関西弁禁止な」
「何を言い出すねん」
「はい、一ペナ」
「そう言えば、何とはなしに眠なってきたわ」
「二ペナ。寝ても良いけど、寝言もカウントするからね」
「堪忍してぇ」