第27話「想定外」
「この季節は、布団からなかなか出られへんよねぇ」
「こう寒い日が続くと、嫌になるわね」
「でも、いつまでも布団の中にいるわけにも行かないのが、辛いところだよね」
「アラームが何度も鳴ってるのに起きないと、起こされる。平日の朝あるあるですよ」
「そうやな。俺は、母ちゃんや妹に、よぅ脇腹を蹴られるなぁ」
「あたしはお母ちゃんに、『早う起き、布団が片付かへんやないの』って言われながら、朱雀ともどもデコを叩かれるんよね」
「無防備やもんね」
「僕は母さんに、布団から起き上がるまで鼻を抓まれるんだ。よっぽど寝起きが悪い時だけど」
「内田さんは、容赦なく胸やお腹をグーで小突いてきますよ」
「どこの家庭も、アグレッシブな朝なんやな」
「秋ちゃんは?」
「うちは起きるまで、彪子伯母さんに大きい声で名前を呼ばれ続けるのんよ」
「スヌーズより効きそうだね」
「でも一番普通なのは、その起こしかたかもしれませんね。あ、そろそろ面談の時間やから、失礼しますわ。お先に」
「少なくとも、直接のダメージはあらへんな」
「それはそうと、教科書に無いことを聞くのは、定期試験として反則やと思わへん?」
「まだ言うてるん、夏海ちゃん」
「教科書に載ってないことなんて、聞かれたっけ?」
「どの教科や、南方」
「家庭科や。三大珍味を答えよってあったやん?」
「あったね、そういう問題」
「書かれへんかったんか?」
「違うんよ、春樹くん。夏海ちゃん、三大珍味の意味が分かってへんかったんよ」
「何だ、そういうことか」
「先生としては、高校生ならこれくらいは常識として知ってるやろうと思うて、サービス問題のつもりで出したんやろうけど、知らん奴が居るとはな」
「悪かったわね、常識知らずで」
「正解は、日本がカラスミ、コノワタ、ウニで」
「世界が、キャビア、フォアグラ、トリュフだよね」
「ほんで、何て書いたんや?」
「日本は松茸、鮒寿司、蝗の佃煮。世界はドリアン、ブルーチーズ、シュールストレミング。十分、珍しいと思うんやけど?」
「珍しければええってものやない」
「大喜利なら、座布団が貰えるかもしれないけど」
「試験としては、誤答よねぇ」
「普通とか、常識とかって、よぅ耳にするけど」
「案外、あやふやなもんやな」




