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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
25/164

第25話「冬コレクション」

「春樹くん、お早う。夏彦くんは、もう見かけた?」

「お早う、西園寺。誰や、夏彦って。名字は山名か、赤松か?」

「あるいは一色かもね。西園寺さん、東野くん、お早う」

「お早う、冬彦」

「ポパイには会ったかい?」

「ポパイ?」

「春樹たち、お早う」

「あ、夏彦くん」

「違うよ、ポパイだよ」

「何てちぐはぐな格好をしてるんや、南方」

「冬彦くんに、夏用のスラックスを借りたんよ」

「中学時代も、同じことをしてたんだ。楠池中学はセーラー服だったから、ポパイってあだ名が付いたんだ」

「でも高校はブレザーやし、上は夏海ちゃんで下が北条くんやねんから、夏彦くんと違う? 似合うてるよ、夏彦くん」

「似合う似合うてへん以前に、校則違反や」

「融通を利かせようよ、東野くん。高校指定の制服なんだから、良いじゃないか」

「女子は足元が冷えるんよ。男子にはわからへんかもしれへんけど」

「早く春になればええのに。寒くて堪らへんわ」

「いつも、あんだけ短いスカートを穿いとったら、脚が冷えて当然や」

「裾を伸ばしたところで、大して暖かくならないと思うけど」

「下から冷たい風が吹き込むんよ、スカートは」

「足首辺りまで伸ばせば、暖かくなるんと違うか?」

「それじゃ昔の不良だよ、東野くん」

「セーラー服ならまだ様になるかもしれへんけど、ブレザーやからなぁ」

「昔の不良は寒がりやったんやろうか?」

「そういうことやないと思う」

「そうや。春樹が上着の裾を、床に擦れるくらいまで伸ばしたら、あたしもスカートの裾を足首が隠れるくらいまで伸ばすわ」

「似合いそうだね」

「裾直しと刺繍は、うちに任せてな」

「勝手に話を進めるんやない。だいたい、どこに何の刺繍をする気や?」

「決まってるじゃないか、春樹くん」

「裏地に極彩色の糸で、昇り龍と漢字を入れるんや」

「文字は、喧嘩上等ってところやろうか?」

「あのなぁ。俺は、この高校の生徒会長やねんで?」

「統率力がありそうに見えると思うんだけどなぁ」

「頼り甲斐がある感じが出るんと違う?」

「今のままで十分や」

「残念やわぁ。せっかく、イメージチェンジするええ機会やのに」

「でも、会長って言うよりは」

「番長って感じになるわなぁ」


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