第25話「冬コレクション」
「春樹くん、お早う。夏彦くんは、もう見かけた?」
「お早う、西園寺。誰や、夏彦って。名字は山名か、赤松か?」
「あるいは一色かもね。西園寺さん、東野くん、お早う」
「お早う、冬彦」
「ポパイには会ったかい?」
「ポパイ?」
「春樹たち、お早う」
「あ、夏彦くん」
「違うよ、ポパイだよ」
「何てちぐはぐな格好をしてるんや、南方」
「冬彦くんに、夏用のスラックスを借りたんよ」
「中学時代も、同じことをしてたんだ。楠池中学はセーラー服だったから、ポパイってあだ名が付いたんだ」
「でも高校はブレザーやし、上は夏海ちゃんで下が北条くんやねんから、夏彦くんと違う? 似合うてるよ、夏彦くん」
「似合う似合うてへん以前に、校則違反や」
「融通を利かせようよ、東野くん。高校指定の制服なんだから、良いじゃないか」
「女子は足元が冷えるんよ。男子にはわからへんかもしれへんけど」
「早く春になればええのに。寒くて堪らへんわ」
「いつも、あんだけ短いスカートを穿いとったら、脚が冷えて当然や」
「裾を伸ばしたところで、大して暖かくならないと思うけど」
「下から冷たい風が吹き込むんよ、スカートは」
「足首辺りまで伸ばせば、暖かくなるんと違うか?」
「それじゃ昔の不良だよ、東野くん」
「セーラー服ならまだ様になるかもしれへんけど、ブレザーやからなぁ」
「昔の不良は寒がりやったんやろうか?」
「そういうことやないと思う」
「そうや。春樹が上着の裾を、床に擦れるくらいまで伸ばしたら、あたしもスカートの裾を足首が隠れるくらいまで伸ばすわ」
「似合いそうだね」
「裾直しと刺繍は、うちに任せてな」
「勝手に話を進めるんやない。だいたい、どこに何の刺繍をする気や?」
「決まってるじゃないか、春樹くん」
「裏地に極彩色の糸で、昇り龍と漢字を入れるんや」
「文字は、喧嘩上等ってところやろうか?」
「あのなぁ。俺は、この高校の生徒会長やねんで?」
「統率力がありそうに見えると思うんだけどなぁ」
「頼り甲斐がある感じが出るんと違う?」
「今のままで十分や」
「残念やわぁ。せっかく、イメージチェンジするええ機会やのに」
「でも、会長って言うよりは」
「番長って感じになるわなぁ」




