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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
24/164

第24話「攻められる東野」

「今度の保育所での読み聞かせ、何の話が良いかな?」

「この前は、白雪姫やったから、今度は日本の話がええんと違うかな」

「鶴の恩返しとか、浦島太郎あたりはどうや?」

「鶴は去ってしまうし、浦島は孤立してしまうからなぁ」

「ハッピーエンドの方がええと思うわ。桃太郎はどない?」

「桃太郎かぁ」

「僕は良いと思うけど」

「腑に落ちない顔やね、春樹くん」

「小学生の頃、よぅ妹にせがまれて読んでやったんやけど、質問ばっかりで、ぜんぜん先に進まへんかったんや」

「青衣ちゃんらしいわぁ」

「質問って、どんな?」

「『昔っていつのこと、昭和?』とか」

「写真も残ってないから、少なくとも江戸以前だよね」

「『あるところって、どこ?』とか」

「おそらく、今の岡山県のどこかやろうね。きび団子が出てくるし」

「『鬼が島って、どんな島?』とか」

「桃太郎が岡山県民なら、瀬戸内海に浮かぶ島だよね」

「『何で動物をお供にするんよ、お友達は居らんの?』とか」

「誘ったけど、断られたんかもしれへんね。危険やもの」

「こんな調子で矢継ぎ早に訊いてくるもんやから、鬼が出てくる前に疲れてしもうて」

「大変だね」

「えらかったね、春樹くん」

「ほんまになぁ」

「でも、大丈夫だよ。三歳児が、そこまで深入りした質問はしないよ」

「この前やって、『美人なら勝手に他人の家で飲み食いしてもええの?』とか『何で継母は、こんな回りくどい方法で白雪姫を殺そうとしたのん?』とかいう質問はなかったやん」

「どこぞのフグ田家の子供みたいに、賢い子が居らんとも限らんけどな」

「アニメと現実は違うよ」

「そんなこと言い出したら、あんな聞き分けの良い一歳児も珍しいよ?」

「そうやな。ひとまず、桃太郎をやるとして、誰が何の役をするかやけど」

「僕、お爺さんとナレーション」

「うち、桃太郎とお婆さんと動物たち」

「ちょっと待て。あと、鬼しか残ってないやないか」

「ちょうどええやん」

「そうそう」

「また、面倒な役になりそうや」


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