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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
23/164

第23話「司書と秘密の部屋」

「悪いわね、手伝わせてしまって」

「いいんです。こういう作業は、好きですから」

「これ、今度アニメドラマ化される小説ですよね、岡本先生」

「そうよ。原作に触れてもらおうと思って、発注したの。それにしても、五月雨式に送られてくるのが溜まっちゃってたから、助かるわ。司書として仕事を溜めるのは、よくないんでしょうけどね」

「先生も、お忙しいんでしょう?」

「こんなにたくさんの本を、一人で管理するのは大変な仕事ですよね」

「そうでもないわ。今やってる分のラミネートが終わったら、終わりにして良いわよ」

「でも、まだ始めの半分近く残ってますよ?」

「僕たちも最後までやりますよ」

「そう。じゃあ、やり切ってしまいましょうか」

「調べ物から帰って来ぇへんから、どないしたんやろうと思うとったら」

「あ、春樹くん」

「東野くんも、一緒にやろうよ」

「それより、資料は見つかったんか?」

「カバンの横に積んであるのが、それだよ」

「はぁ、結構あったんやな。これだけ色々あれば、何とかレポートはまとまりそうやな。ほんなら、俺も手伝おうか」

「あら、助かるわ。ところで、レポートは誰先生の課題なの?」

「社会科の住吉先生です」

「毎週末の授業で課題を出て、週の頭の授業で提出するんです」

「評価が辛いから、手を抜けないんです」

「変わってないわね、鉄の女は」

「前からそうなんですか?」

「そのあだ名を知ってはるということは」

「岡本先生って、ここの卒業生なんですか?」

「そうなのよ。わたしが通ってた頃から、社会科の住吉先生は鉄の女で、体育科の大物先生は熾熱燈って呼ばれていたの」

「卒業アルバムが後ろの棚にありますけど」

「目敏いな、西園寺」

「見てもいいですか?」

「ちょっと恥ずかしいんだけど、見たければどうぞ。はい」

「あ、四組に。先生、若い」

「この頃は詰襟とセーラー服だったんですね」

「前身ごろにボタンが無いタイプね」

「山手にあるのに、海軍型の学生服だって、他校からよくからかわれたものよ」

「鉄の女も、熾熱燈も、白髪が生えたり、生え際が後退したりする前やな」

「先生、スタイルいいですよね。モテたんじゃありませんか?」

「楽しかったですか、高校生活」

「それほどモテはしなかったし、何かと忙しかったけど、面白い毎日だったわ」


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