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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
22/164

第22話「セカンドオピニオン」

「喘息持ちなのね。発作は収まったみたいだけど、横になる?」

「ここで大丈夫です、神崎川先生」

「無茶しないほうが治りが早いわよ。あ、はい。保健医の神崎川です」

「無理しないほうが良いよ、東野くん」

「ほんまに、もう平気やから」

「そう? それじゃあ、僕は授業に戻るよ。持久走の途中だったから」

「あぁ。心配かけて悪かったな」

「気にしなくて良いよ。僕が勝手に付き添ったんだから。失礼しました」

「悪いけど、ちょっと席外すわ。奥のベッドは空いてるから、しんどくなったら横になってね。すぐ戻るわ」

「はい、わかりました」

「……保健室の先生って、お忙しいんやね」

「あぁ、西園寺も居ったんか。また、耳鳴りか?」

「そうよ。小さい時ほどは酷くないんやけど、授業に集中できへんから抜けてきたんよ。音楽家の一人娘が、左耳が不自由なんてねぇ」

「父ちゃんがピアニストで、母ちゃんがバイオリニストやからって、西園寺まで音楽家になる必要はあらへんやろう? 俺やって親の会社に勤めるとは限らへんし」

「それは、サラリーマンやもん。事情が違うてる」

「何にも違うてへん。中学に上がってから、小母さんの店を手伝うてみて、自分はこっちのほうに向いてるん違うかって、この前、言うとったやないか」

「それは、そう言うたけど、それはそれ、これはこれやって」

「それとこれは、何ぞ違うことあらへんやないか」

「違うてへんことあらへん」

「分からず、屋や、な」

「ちょっと、全然大丈夫なことあらへんやん。ほんまに、昔から強情なんやから。ほら、しっかり」

「はぁ。情けないなぁ、俺も」

「吸引薬は?」

「ここんところ、ほとんど発作が起きてへんかったもんやから、家に置いてきた」

「何で置いて来るんよ。信じられへん」

「もう、使わんでも、ええかなぁと思うて」

「勝手に判断したらあかんやん。使わんでも、安心材料として持っておくもんや」

「そうやな。返す言葉もあらへん」

「授業終わったよ、東野くん」

「調子はどない、秋ちゃん」

「うちは、もう治まったみたいやわ、夏海ちゃん。でも春樹くんは、もうちょっと、ここに居ったほうがええんと違う?」

「まだ治まらないのかい、東野くん?」

「おおかたは、ええんやけどな。念のため、主治医に従うとこう」


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