表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第1部
21/164

第21話「甘いもの神の乙女」

「そんなところに立って何してるの、東野くん?」

「中で西園寺と南方が女子会をしてるんや。それで俺は、誰かが入って来ぇへんように、こうして見張ってるという訳や」

「じゃあ、中に入れないの?」

「男子禁制らしい。また女装するか、冬彦?」

「勘弁してよ。二度とスカートは穿かないから。会話が弾んでるみたいだけど、中で何してるんだろう? 定例会用に昨年度の会計簿を見ようと思って来たのに」

「そのうち終わるだろう。急ぐのか?」

「今日中に手に入ればいいから、急ぎはしないよ」

「話は聞かせてもらいましたよ。ここからは中之島正が、己の灰色の脳細胞を働かせて、真実という緋色の糸を、じっちゃんの名に懸けて選り分け、見事、中の様子を推理してご覧に入れましょう」

「古今東西の探偵が混ざっとるなぁ」

「待っていても暇だから、退屈凌ぎに聞いてみようか」

「中にいはるのは、隊長と書記さんなんですよね?」

「そうや」

「そして扉の下から漂う、この甘い匂いは、もしや」

「エアパイプにエアルーペで推理してるところ悪いが、朝のバスで西園寺が、近所の有名洋菓子店の紙袋を持ってたのは知ってるんや」

「あぁ、あのカタカナ四文字のお店だね。時々お客さんから頂くから、よく知ってるよ」

「出鼻を挫かんといてくださいよ」

「どうも俺は、あの店の商品は甘過ぎて食べられへんねん。妹は好きなんやけど」

「僕もあまり好きではないな。白砂糖の甘さが強すぎる所為で、素材の味が死んでしまって、どれを食べても同じような味に感じるんだよね」

「その、舌にダイレクトに響く甘さが、女子に人気の秘訣なんですよ」

「そうか?」

「多分そうやろうなって。知りませんけど」

「自信満々に責任逃れするんだね。それとも、甘くしないと売れないのかな?」

「あるいは、菓子は甘い物という固定観念が根強すぎるのか」

「三人でどれだけ考えても、正解には辿り着けへんのと違うかと」

「どうしてだい?」

「なぜなら、我々は男子だからである」

「くだらん」

「あぁ、やっぱり。道理で廊下が騒がしいなぁと思っとってん」

「もう入ってええよ、三人とも」

「あぁ、寒かった」

「えぇっと、昨年度の資料は、と」

「以上、現場から中之島正がお伝えしました。一旦、スタジオにお返しします」

「誰に向かって言うてるん、副長?」

「せっかく話がまとまったのに、台無しにせんといてくださいよ、隊長」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ