第2話「中之島レポート」
「一年一組の中之島正です。今日は記者倶楽部の副長として、生徒会の先輩方の一日に密着取材したいと思います」
「どこに向かって言ってるんや?」
「さすが会長。ツッコミが冴えてはるわ」
「ほっときなさい。いつもの気まぐれなんやろうから」
「書記さんにほっとかれても、不肖、中之島は決してめげません。そしてこちらが会計さんです、ってあれ?」
「『ちょっと席外すね』と言うて、どこかへ行ったけど?」
「隊長。何でそこで止めてくれはらなかったんですか!」
「たしかに取材するとは言うたけど、朝っぱらからやるとは言うてへんよ。後でええやん」
「ええことないですよぉ」
「話が済んだようやから、俺は一組に戻るで」
「うちも、二組に戻るわ。夏海ちゃんも一緒に行こう」
「そうやね。行こうか、秋ちゃん」
「誰か、中之島の意見を聞いてくれはらへん?」
「よぉ聞いたるわ。昼休みにな」
「お預けとは。会長、こすい、こすい」
「春樹は別に、こすくないわよ。あんたが、隊長のあたしに逆らって、勝手なことをしてるだけやないの」
「せやね。夏海ちゃんの言う通りやわ」
「中之島くん、おる?」
「あぁ、えぇと」
「たしか、理科の先生で」
「今年の春から、ここへ来はった人や」
「出屋敷や。覚えてな」
「我らが担任の顔と名前を、忘れるはずあらへんやありませんか」
「きみは、毎日会うてるからね。今日は自分、日直なんやけど、日誌のこと、忘れてへん?」
「そうやった、そうやった。すぐに取りに行きますわ」
「ほな、中之島くん、借りてくで」
「先輩方、昼休みに会いましょう。さいなら」
「……まさか、あだ名が幕の内だとは」
「本人には、よぅ言われへん。けど」
「これっちゅう特徴が無いんよねぇ、あの先生」