第61話「怨憎会苦」
「秋ちゃんが、お見合い?」
「まぁ、お見合いっていうほどの、堅苦しいもんと違うらしいんやけどな。ええ人が居るから、いっぺん会うてみぃって言われたから、会うたらしいんや」
「ほんで、お見合い相手は?」
「二十歳の前衛画家やって。ニューヨークで個展を開いたこともある、若手実力派なんやそうな」
「ふぅん、芸術家か。ええやない」
「そう、あっさり言うなや。西園寺は嫌がってるんやから」
「何や。それなら、断ったらええやん」
「どうも、そう上手くいかへんらしいんや。押しの強い人らしくって、手を変え、品を変え、何度もアプローチして来るみたいでな。西園寺は、これやったら、会わへんかったら良かったって言うてるぐらいなんや」
「相手には、気に入られてしもうたんや。困ったもんやね」
「やぁやぁ、遠からん者は、音に聞け。近くば寄って、目にも見よ」
「中之島か。厄介者が増えたな」
「まぁ、来てしもうたのは、仕方あらへんやん。今日は、何しに来たのん?」
「この、合格通知を、しかと見よ」
「国立大に受かったんか。おめでとう」
「おめでとう、隊長」
「リアクション、薄っ。もっと、感激してくださいよぉ」
「中之島やったら、十中八九、受かるやろうと思うとったからなぁ」
「意外性がないんよ。落ちたら、残念会するところやけど」
「ひどいですよ」
「悪いんやけど、今は、そういう話に乗り気になられへん事情があってな」
「そういうことやから、また、今度」
「水臭いですよ、お二人さん。話してみぃへんと、分からへんもんですよ?」
「どうする、南方?」
「話すだけ、話してみるしかないのんと違う?」




