第58話「冬至」
「おい、お前」
「ん? うちのこと?」
「見かけへん顔やな。どこの学校の人間や?」
「何で、そんなこと教えなあかんのん?」
「口答えするとは、生意気やな。おら」
「きゃっ。何するのんよ」
「ええから、答えろ」
「こんな薄暗い時間に、こんな薄暗いところで、何をしてるんや?」
「委員長さん」
「キョウさん。えっ、あぁ、その。初対面の挨拶を」
「ほぉ。最近では、胸をどつくのが礼儀なんやな」
「いやぁ、あの」
「言い訳はええから、とっととどっか失せやがれ、このチンピラ中学生が」
「ひぃ。堪忍したってぇ」
「……よし、逃げたな。どこか、怪我してへんか?」
「平気、平気」
「それは、ええ。千林に用があったんか?」
「そうなんよ。あの、委員長さん」
「言いたいことは分かる。聞きたいことが山積みやろう。せやけど、胸に秘めたままで頼むわ。さっき見た光景も、早う忘れてしまいや」
「おおきに。助けて貰うてへんかったら、どうなっとったか」
「中学生は、法律上は未成年でも、身体は大人やから、気ぃ付けるようにな。俺は、このまま商業区域のスーパーに行くところやから、途中のバス停まで送るわ。うしろの荷台に乗り」
「えっ、そんな。うちは、大丈夫やから」
「ええから、乗って行き。さっきのクズが、その辺をウロウロしてるかもしれへんし」
「それも、そうやね。ほんなら、お言葉に甘えて」
「……乗れたか? しっかり掴まっときや」




