第55話「南瓜のランタン」
「蝋燭出せ、さもなくば、庭木にトイレットペーパーを巻きつけてやる」
「違うもん混ざっとるで、中之島。それやったら、ただの恐喝やないか」
「トリック・オア・トリート」
「菓子でもてなさないのなら、悪戯するぞ?」
「分かった、分かった。今、用意したるから。青衣、準備は出来たんか?」
「この通り。うちも、お菓子ちょうだい」
「妹さんは、魔女なんやね」
「隊長殿がキョンシーで、我輩がドラキュラで、冴絵殿が化け猫と来て、妹君は魔女か」
「こっちへ来る前に、楠浜のマンションに行って来たんですけど」
「千林や委員長が住んどるところか?」
「そうですよ。書記さんがフランケンシュタインの怪物で、委員長がジェイソン、樟葉は狼男やったんですよ」
「向こうも向こうで、仮装済みやったんか」
「ここで騒ぐと、他の住民から目を付けられるからと言われたので、場所を七士館に移すことにした。このあと、合流する」
「二手に分かれたんか。千林班は今、どこに行ってるんや?」
「白蝶貝に寄って、狐火に扮することになってる部長さんをピック・アップすることになってるんです」
「七士館では、大所帯になるんやな。まぁ、玄介さんも黒江さんも、打ち合わせから乗り気やったから、賑やかなほうがええんやろうけどな。こんなもんで、ええか?」
「十分ですよ、東野先輩。ほんなら、移動するで」
「おおきに、春樹先輩」
「邪魔したな。騒がしくしたようで、済まなかった」
「行ってくるわね、お兄ちゃん」
「おぉ。気ぃつけてな」




