第54話「柔らか頭」
「七六銀」
「四八角、王手」
「うっ。三六王」
「二四桂、王手」
「しもうた、詰まれた。参りました」
「もう一戦するか? 何なら、チェスでも構わへん」
「何をしてるんっすか、会長?」
「目隠し将棋や。将棋は、強いつもりやったんやけど、委員長には勝たれへん」
「小学校、中学校と、クラブで鍛えられたからな」
「将棋も、チェスも、駒の種類や動きすら怪しいんっすよね。どんな駒があったっすか?」
「将棋は、王将、飛車、角行、金将、銀将、桂馬、香車、歩兵の八種類や」
「チェスは、キング、クイーン、ルーク、ビショップ、ナイト、ポーンの六種類」
「それぞれに動きが違うんっすよね? 俺には、覚えきれないっすね」
「覚える気がないだけやないのんか?」
「たしか、ポーカーが強かったな。咄嗟にどの役を作るか考えるほうが、俺にとっては難しいと思うがな」
「勘でやってるんっすよ。何も難しく考えることはないっす」
「せやけど、樟葉。ストレートフラッシュ、フォーカード、フルハウス、フラッシュ、ストレート、スリーカード、ツーペア、ワンペアの八通りの役あるんやで?」
「役にならへん場合もある」
「策士、策に溺れるって言うやないっすか。作戦を立てないのが、秘訣っすよ」




