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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第2部
152/164

第52話「部分と全体」

「どれも何とか、良か可は取れたな」

「何を見てるのん、春樹?」

「大学の学修簿や。来しなにポストを覗いたら、入っとった」

「学校によって、全然違うんやね。各科目の横に書いてある、この二つの数字は?」

「左が、調整前の得点。右が、調整後の得点。各科目の最高点は、百二十点。百一点以上やったら、百点を超える分が一番低い科目に回されることになってる。総合評価方式っていうそうや」

「得意科目で頑張った分で、苦手科目を補填できる訳やね?」

「そういうこと。このシステムや無かったら、不可が付いたかもしれん」

「必修は、専門演習だけなんやね」

「そうなんやけど、あとの選択必修かって、開設科目が少ないから、結局、受講生の大半は単位を取り易そうなところに集中して、似たり寄ったりの時間割になるんや」

「そうなんや。でも、選べるだけええやない。あたしのところは、時間割も座席も決められてるから」

「短大やからな。大学とは勝手が違うんやろうな」

「入学早々、卒業後の進路についてガイダンスがあったのは面食らったんやけど、よぅ考えたら、来年の今頃には、進路を確定せなあかんねんなぁ」

「そうか。俺らが四年掛けて考えることを、二年で考えなあかんねんなぁ」

「そんな深刻な顔せんといてよ」

「かーって嬉しい、花一匁。お待たせ、お兄ちゃん」

「早かったな、青衣」

「青衣ちゃん、その花束はどないしたん?」

「ソレイユのおっちゃんに貰うたんよ。間違うて仕入れ過ぎたんやって」

「七丁目の花屋か。商店街を抜けてきたんか」

「あの、強面で髭を生やしたおっちゃんやね?」

「そう、そのおっちゃん。一匁は三十七・五グラムやねんて」

「すると、四匁で百五十グラムか。たしか、百匁で一貫やったな」

「そうすると百貫デブは、三百七十五キログラムか」

「お相撲さんクラスやね」

「力士でも、大半は二百キログラム以下や」

「二人分弱やね」

「普通の大人は、何貫になるのんやろう?」

「十二貫で四十五キログラム。二十貫で七十五キログラム。大体、このあいだになるのんと違うかな」

「おおよそ、そんなもんやね。それにしても、朱雀は何をしてるんやろう?」

「季節限定、食べ放題半額祭」

「遅うなると、並ばなあかんようになるからなぁ」

「そうかと言うて、先に行って席を確保する訳にもいかへんし」

「入店時から、カウントがスタートするのんよね?」

「そうや」

「待たせたようだな」

「遅いわ、朱雀」

「ちょっと、夏海お姉ちゃん」

「巌流島と違うぞ、南方?」

「空腹で、気が立ってしまっているのだろう。元を取ろうと、朝食を摂っていないからな」

「えぇい。バラすな」

「まぁ、まぁ」

「これは、一刻も早うに、目的地へ移動したほうが良さそうやな」

「さらば、いざ行かん、バイキングへ」


「そんな、恨めしそうに皿を睨まんでも」

「まだ、時間は残ってるのんや。食べな、損やないの」

「食べ過ぎて体調を崩したら、元も子もあらへん。止めとき、止めとき」

「ぐぬぅ。今だけ、レスラーになりたい」


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