第51話「再興」
「綱引きは、楠浜班の圧勝でしたね。玉造選手が勝因でしょうか?」
「あれだけ重量級のデカ物が居ったんでは、他の班は勝たれへんわな」
「さて。震災後に仮設住宅が建ち並んでいたため、長らく開催できなかった三区合同運動会が、二十年以上の時を経て復活しました。続いての種目は、中学・高校生による、三区対抗三人四脚です」
「障害物競走に参加したあとやというのに、元気やな」
「台本通りに進めてくださいよ」
「はい、はい。楠川班より、実況、中之島、撮影、東野でお送りしてます。これ、毎回言うことないのんと違うか?」
「あとで、ここから観た時のためですよ。楠川班には、箕谷冴絵、鳳華梨那、東野青衣の三選手。楠池班には、南方夏海、樟葉礼多、南方朱雀の三選手。楠浜班には、千林瑠璃、京橋美己、桃谷隆の三選手がスタンバイしてます」
「百四十センチメートル台の楠川班、百六十センチメートル台の楠池班。この二班は身長バランスがええように思うんやけど」
「楠浜班は、百七十センチメートル台の千林・京橋両選手と、百五十センチメートル台の桃谷選手が、ブイ字に並んでますね。三組、一斉にスタートしました」
「コンパスが大きいだけあって、楠池班が一歩リードやな」
「楠川班も、健闘してますね。一方、楠浜班は、苦戦しているようです」
「一歩の幅や速さが全然違うから、ごたごたしてるみたいやな」
「楠池班は、順調ですね。おっと、紐が解けてしまったようです。これは、時間のロスです」
「樟葉くんか朱雀くんの結びかたが、甘かったんやな。結び直してるあいだに、抜かされてしもうたな」
「楠浜班も、ペースを掴んだようです。ぐいぐい追いかけています」
「楠池班の足並みが乱れています。遅れを取り戻そうと焦っているのでしょうか?」
「そうやろうな。南方がテンパってるみたいや」
「ちなみに、テンパるという言葉は、麻雀の聴牌から来ています」
「隙のない解説やな」
「もうすぐ、決着です。楠川班が逃げ切るか、楠浜班が追い抜くか、はたまた、楠池班が大逆転するのか」
「シー・エム前の煽り文句みたいになってるで。クール・ダウンせな」
「熱い男、中之島正です」
「残暑が厳しい中では、暑苦しいだけや。ええから、座って実況せぇ」
「ゴール・テープを切ったのは、……我らが、楠川班です」
「何とか追い上げを振り切って、逃げ切ったか。青衣や箕谷は余裕がありそうやけど、鳳はバテてるみたいやな。さてと。俺は、次の種目に出なあかんから、席を外すわな」
「スウェーデン・リレーですね。頑張ってくださいよ」
「久し振りに走るから、無理せん程度に頑張ってくるわ」




