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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第2部
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第47話「密閉容器」

「この香ーる、風ーに、開ーけよ。それ、一、二、三。あっ、太鼓饅頭の人や」

「ハムの人みたいな言いかたやなぁ。俺は、東野春樹」

「この前のお姉ちゃんは?」

「南方夏海。それにしても、この頃、よぅ会うなぁ。前かごの袋に入ってるのんは何や?」

「花火セットって、子ども会の小母ちゃんが言うとった」

「あぁ、そこの児童公園のラジオ体操か」

「体操だけと違う。楠川センソウもしたから、貰えたんや」

「それはセンソウや無うて、清掃や。誰も戦うてへん」

「空き缶とタバコが、袋いっぱいになるぐらいあったんやで」

「ポイ捨てか。敵わんやっちゃなぁ。しかも、大人が捨てたゴミを、子供が拾うとは」

「なぁ、線香花火って、どれ?」

「この、隅っこに入ってるのが、そうやろうな」

「もっと紐みたいなのんと違うん?」

「それは、紙で出来た長手のほうやな。こっちは、藁で出来たスボ手や」

「ふぅん」

「他にも、何か入ってるみたいやけど?」

「あぁ、これ? シリツの小学校に入るための、お勉強セット」

「昇くんは、小学受験するんか。次の鳴き声を、下の動物と線で結びましょう」

「鼠は見たこと無いからわからへんけど、犬はグルル、猫はシャーのほうが合うてるのに」

「チューチュー、ワンワン、ニャーニャーのどれかみたいやな。太陽は赤、月は黄色、海は青で塗りましょう、か」

「黄色のお日さんや、白いお月さん、緑や黒の海ではあかんねんて」


「昇くんは、まだ年中組やのに。忙しない親や」

「朝に、そんなことがあったんやね」

「いーろーいーろー、なーに色」

「紫」

「見てる色は人それぞれ認識が違うてるのに、色名から、それが同じ色やとして伝わる共感性は、不思議なものやな。――どこに紫があるんや?」

「二つの色の閾値は、人それぞれやけどな。まぁ、本来は分かれていない物を、便宜上、分けてるから、当たり前か。――あの遊具と違う?」

「どこかで線引きして分類することが、科学の第一歩やからな。――あっ、捕まった」

「あたしは、何でもラベルを付けたらええってもんでもない気もするわ。――鬼、交代やね」

「伸び伸びと遊ばせるのも、成長には欠かせへんと思うんやけどなぁ」

「早いうちに固定観念を植え付けるのは、あんまりええことないやろうね」

「いーろーいーろー、なーに色」

「黄緑」

「この前の誕生日会は、盛り上がったな」

「あたしが七月二十三日で、朱雀が八月二十七日で、いつも夏休み中になるのんもあって、家族でしかやったことなかったんよ」

「大勢で集まって、気疲れしたんと違うか?」

「あんまり仲良うないメンバーやったらそうやろうけど、みんなよぅ知ってるから」

「二人には、気の置けない仲やとは思うけど」

「お父ちゃんも、お母ちゃんも、家に人を呼ぶのが好きやから」

「そうか。それなら、ええんやけど」

「それに、好評やったよ。春樹と青衣ちゃんの、手作りマーマレード」

「レシピ・カード通りに出来たからな。防腐剤とかは入れてへんから、なるべく早うに食べ切ってな」

「心配せんでも、すぐに無うなるわ」


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