第44話「蔵出し、蔵入り」
「一輪車に、キック・スケーター。バレーボールに、バドミントン一式」
「色んなものが眠ってたんやなぁ」
「寝かせてないで、たまには使うたらどうなんよ、正くん」
「一輪車やキック・スケーターは一人で使えるけど、あとの二つは、誰か居らんとなぁ」
「呼んだらええやない。今度の花火大会の日に、昼から集まったらええのんよ」
「そうか。その手があった。内田さん、ナイス」
「南方。これは、羽子板と違うぞ?」
「ええやない。羽根を突き合うのんには、違いあらへんのやから」
「負けた時のペナルティがあったほうが、試合として盛り上がるものねぇ。僕たちは、向こうでバレーボールしてるから」
「終わったあとに、二人の写真を撮らなあかんね」
「撮らんでええぞ、西園寺」
「ほんなら、あたしから行くでぇ」
「どっちも、墨だらけだね」
「これは、どっちが勝ちとも言われへんね」
「一応、俺のほうが点数は高いやけどなぁ」
「たったの二点差やない」
「百、二十、七番、の、カードでお待ちのお客様」
「市役所みたいな言いかただね」
「もしくは、銀行やね」
「小芝居はええから、早う持って来い」
「ウェット・ティッシュひとつで、勿体付けんといてよ」
「屋上に、こんな広いバルコニーがあるとはなぁ」
「お庭とは違うて、周りが見渡せるから、開放感があるわぁ」
「少し離れてるけど、これなら、ゆっくり観られそうだね」
「河川敷は、いっつも混み合うてるもんね」
「ベスト・スポットでしょう? 一度は呼ばなあかんなと思うてたんですよ」
「おっ。始まったみたいやな」
「たーまやー」
「かーぎやー」
「先に言うとくけど、炎色反応で一節、話し出したら、すぐに内田さんに撮み出して貰うからね、中之島くん」
「んなっ。釘を刺されてしもうたか」
「はい、皆さん。西瓜ですよ」




