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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第2部
143/164

第43話「七色プラス・ワン」

「車内に扇風機がある、弱冷車とはねぇ」

「今どき、珍しいっすよね、北条先輩」

「中之島。無理して吊り革に掴まらんでも、ええんやぞ?」

「無理してませんって」

「そういえば、生徒会の選挙は、もう終わってるんだっけ?」

「そうっすよ。毎年恒例の、七夕選挙っす」

「次代は、誰になったんや?」

「対立候補の不在で、信任投票だけやったんですよ。会長は副長で、書記は箕谷さんですよ」

「第三十六代は、朱雀会長と、箕谷書記か。徽章の引継ぎは、楠山祭のあとにやるの?」

「そうっすよ。二人は、三十七代も継続することになりそうっすね」

「生徒会執行部役員って、人気がないんやなぁ」

「面倒臭いことが多いのんは、確かですよ」

「二人が立候補したのは、何か理由があるのかな?」

「きっかけは、図書室で大石先生にスカウトされたことらしいっす」

「そういえば、二人とも図書委員なんやったな」

「大石先生って、しょっちゅう図書室に来はるんっすよね」

「数学教員のはずなんだけどねぇ」

「自習も多いですよ。どこで、何をしてはるのんやら」

「俺らのときも、謎だらけやったな」

「学校に一人は、何をしてはるか分からへん先生が居るもんっすよね。――飴ちゃん、どうっすか」

「缶入りの飴だね。味は、イチゴ、レモン、オレンジ、パイン、リンゴ、ハッカ、メロン、スモモだっけ?」

「メロンとスモモがあるのは、緑の缶ですよ」

「赤い缶は、ブドウとチョコやったな」

「どっちにしても、ハッカがあるんっすよね」

「苦手なの?」

「樟葉は、喉がスースーするものがあかんよな。ハーブ風味の飴とか、ニッキとかシナモンとか」

「好みが分かれるところやな。俺は、甘い味ばっかりやったら締りがないから、ハッカがあるほうがええと思うけど」

「歯磨き粉を連想させられるから嫌なんっす。チョコミント味のアイスクリームとか、イチゴ味のカキ氷とか」

「だから、真っ先にメロン味を選んだのか」

「作り物染みた清涼感は、度が過ぎると不快になるもんですよ」

「そうやな。――もうすぐ降りるから、荷物を用意せぇよ」

「あ、向こうに虹が見えるっすよ」

「本当だ」

「どこ、どこ?」

「ほら、あの雲の近くや。ドア・ステッカーの無いところで見ぃ」


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