第39話「プール・サイド」
「会長。日焼け止めに、エス・ピー・エフとか、ピー・エーとかってあるけど、あれってどういう意味なんか知っとる?」
「ええ質問やな、書記さん。今日は誰かに、絶対その質問をされると思うて、ちゃんと調べてたんや。エス・ピー・エフは、サン・プロテクション・ファクターの略で、主にシミやそばかすの原因になる、紫外線ビー波の防止効果を表す目安の数値なんや。紫外線が当り出してから、日焼けしてしまうまでの時間を、数字の倍数だけ遅らせるっていう意味やねん」
「ふぅん。ほんで、ピー・エーは?」
「プロテクション・グレイド・オブ・ユー・ブイ・エーの略で、主にシワやたるみの原因になる、紫外線エー波の防止効果を表す目安の数値なんや。プラスが多いほど、効果が高いとされとるよ」
「何やら、化粧品会社の回し者みたいやね」
「うち、日焼け止めを塗っておかへんと、すぐに炎症を起こしてしもうて、赤いポツポツが出てくるのんよねぇ」
「紅斑が出やすい体質なんやろうなぁ。それは、ともかく。何で、もう入らへん俺らが、プール掃除をせなあかんのやろう。そう思わへん、部長さん?」
「そうやね、中之島くん。炭酸飲料のシー・エムみたいな爽やかさとは、えらい掛け離れた惨劇ぶりやわぁ」
「あたしも、まさか、これほど酷いとは思わへんかったわ」
「魚崎先生が、捨ててもええ、動きやすい格好で参加することって言うてた意味が、よぅ分かるわ」
「結局、みんな中学時代のジャージに落ち着くんやね」
「よそに着て行かれへんし、そうかと言うて、学校名が入ってるから、簡単にほかされへんからねぇ」
「白蘭会は、白地に緑ラインなんやな」
「国立大付属は、紺地に赤ラインなんやね」
「国立大付属のような進学校でも、白蘭会のようなお嬢様学校でも、体育の授業はあるんやね」
「そら、そうやって。あっちに居る、赤地に紺ラインは楠池で、緑地に白ラインは楠川か」
「ほんで、楠浜は鼠地に黒ライン、と」
「向こうの委員長とか、桃谷とかも同じ格好をしてるけど、墓石か、板蒟蒻が歩いてるみたいやろう?」
「否定は、せぇへん」
「デッキ・ブラシに頬杖付いて、日陰でお喋りばっかりしてへんと、手を動かしや。それやったら、いつまで経っても終わらへんよ?」
「注意されてしもうたな」
「よぅ、通る声やね」
「天然拡声器やね」




