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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第2部
133/164

第33話「不良と仔猫」

「それで、カツアゲもせずに家まで送っていったんっすね? セイさんも、丸くなったっすね。中学時代なら、誘拐疑惑がかかったところっすよ」

「悪かったな、元ヤンキーで。五歳児をカツアゲしたところで、何の意味があるんや?」

「まぁ、無いに等しいっすね。やるなら、郵便局から出てきた高齢者っすね」

「お前も大概やぞ、ライ」

「セイさんには及ばないっすよ。おや?」

「急に前に出るなや。どないしたんや、ライ?」

「この水路から、猫の鳴き声が聞こえたんっすけどねぇ」

「猫?」

「あぁ、ここっすね。ほら、青い目が」

「ほんまや。出られへんのやろうか?」

「仔猫にとっては、絶壁っすからね。しばらく、ここに居て貰えるっすか、セイさん。俺は、伊丹さんを呼んでくるっす」

「おぅ。任せとき」

「頼んだっすよ」


「近くの墓園から、迷い込んできたんやろうな」

「この近くに、墓園なんかあったっすか?」

「すぐ隣の修道院の敷地内と違うか、樟葉?」

「そうそう。かなり弱ってるから、体力が快復するまでは、用務員室で預かるか」

「よかったな、レーセン」

「そのネーミング・センスはどうやろう?」 

「何で、レーセンなんだ?」

「雑種やけど、アメリカン・ショートヘアとロシアン・ブルーを足して二で割ったような見た目っすから」

「一匹冷戦状態ってことやねんて」

「なるほどな」

「早う元気になりや、レーセン」

「……中学時代の樟葉からは、考えられへん光景やなぁ」


「結構、居るもんやなぁ」

「虎縞に、斑に、黒猫、白猫。あと三毛猫も居るっすね」

「ライ。ほんまに、このまま返してええのんか?」

「責任を持って最後まで面倒を見られないなら、必要以上の施しをしてはいけないっすよ。期待を裏切ってしまうし、猫が自力で工面する努力も、失わせてしまうっすから。風邪薬やサプリメントの多用で、免疫力や自然治癒力が落ちるようなものっすね」

「せやから早めに、ってことか」

「セイさん。本当はセイさんこそ、手放したくないんと違うっすか?」

「俺は、別に」

「飼われへんのに、餌だけやる訳にはいかないっすよ、セイさん?」

「わかっとるわ。……こういうドライなところは、変わってへんなぁ」


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