第13話「きっと来る」
「『レンタルショップで映画を借りて来たから、みんなで見ようや』ってメールが南方から送られとったから、来たのはええものの」
「まさか夏海ちゃんがホラー映画好きやとは、夢にも思わへんかったわ」
「実話系ですよ。見たら絶対呪われるんとちゃいますかねぇ。楽しみやわぁ。ね、会計さん」
「どうか自縛霊でありますように」
「ほんじゃあ、再生するわね」
『これは、とある高校で本当にあった怪奇現象である』
「よりによって、学校物かいな」
「日曜日に見るべきやない気ぃするわ。今からみんなで違うことせぇへん?」
「まだ始まったばかりやないですか、書記さん。これから、これから」
「急に出てくるなよ、自縛霊」
「何やってんのよ、冬彦くん。それじゃ、よく見えへんやろうに」
『ここで、生徒会長の証言をお聞きいただこう』
「待って。何で会長が目撃者なん?」
「良かったん違いますか、会長。少なくとも、収録時点では生きてはるんやから」
「もう、観てられへん」
「観てられへんって言う割には、指の隙間から凝視してるように見えるんやけど?」
「会長が大丈夫なら、生徒会は大丈夫のはずだ」
『それでは、実際の映像をご覧いただこう』
「何や、この足音は?」
「不気味やわぁ」
「いよいよですなぁ」
「興奮するわぁ。ちょっと、冬彦くん。それじゃあ、聞こえへんやろ? ムンクの叫びみたいなポーズしてからに、ほら」
「やめて。聞きたくない」
『お分かりいただけただろうか』
「これ、幽霊とは違うてる気がするなぁ」
「隊長も、そう思わはりますか」
「やっと怖いのが終わったんやね。ほっとしたわ」
「さんざん煽った割には、しょうもない落ちやったな」
「この恨み、晴らさず置くべきか、わぁ」
「こら、朱雀。あたしの部屋に勝手に入るんやない」
「ほ、本物が出たぁ」
「しっかりせい、冬彦。今のはここの」
「自縛霊だ。自縛霊が居たんだ」
「あかんわ。北条くん、完全に別世界に行ってしもうてる」
「会計さん、カムバック」
「あんたが変な悪ふざけするからやで、朱雀」
「は。さては、打ち打擲する気だな。それならこちらにも考えがあるわ」
「反撃するんと違うんかい。逃げるなや、この軟弱者」




