表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第2部
129/164

第29話「市立図書館にて」

「まだ語彙が少ない子供に、細かなニュアンスを伝える時には、オノマトペが役に立つので、有効活用しよう、って北条先輩のメモがある」

「ただし、外国人のように文化圏が異なると、かえって分かりにくいと思われる、という東野先輩のメモが続いてるけど、どういう場面やったんやろう?」

「分からないっすねぇ。生徒会で、保育所の三歳児クラスの子に、読み聞かせに回るって言うてもなぁ」

「ピンと来ぇへんのか、会計くん?」

「とりあえず、絵本を探そうやないの」

「そうやな、書記さん。昨年は、桃太郎やったみたいやから、今年は外国の話がええと思うんやけど、どない?」

「それがええんと違うかな。礼多くんは、どない?」

「二人に賛成っす」

「ほんなら、絵本を借りに行こうか」


「ええっと。児童書の、絵本コーナーは」

「この辺っすね。結構、ぎょうさんあるんやなぁ」

「グリム童話なら、ブレーメンの音楽隊、蛙の王様、ラプンツェル、茨姫、赤頭巾ちゃん、ヘンゼルとグレーテル、青髭、杜松の木、狼と七匹の仔山羊、白雪姫、シンデレラあたりやな」

「アンデルセン童話やったら、人魚姫、醜い家鴨の子、赤い靴、親指姫、裸の王様、燐寸売りの少女、雪の女王あたりか」

「イソップ寓話で、アリとキリギリス、田舎の鼠と町の鼠、兎と亀、北風と太陽、狐と鶴のご馳走、金の斧と銀の斧、すっぱい葡萄、卑怯な蝙蝠あたりも、面白いけどなぁ」

「あとは、長靴を履いた猫とか、三匹の仔豚とか、幸せな王子とかやな」

「候補は、その辺にしておこうよ」

「際限ないもんなぁ。赤い靴って、曾爺さんに連れ去られる話っすか、会長?」

「それを言うなら、異人さんや。それに、童謡やない。童話のほうや」

「赤い靴を履き続けとったら、靴が独りでに踊りだしてしまう話や」

「あぁ。そんな話もあったっすね」

「まぁ、ハッピー・エンドの話がええやろうなぁ。そうなると、シンデレラあたりが無難か」

「ベタやなぁ、会長」

「ベタっすね、会長」

「ええやないか。文句があるなら、代案を出せぃ」

「別に、ベタなのがあかんとは言うてへんよ。あたしは、継母と姉妹と魔女の役をやるわ」

「それじゃあ、俺は、王子様とナレーションをやるっす」

「ほんならって、ちょっと待てぃ。あとは、シンデレラしか残ってへんやないか」

「シンデレラの声が男子っていうのは、斬新やね」

「会長が、既成概念を突き破るんっすね」

「二人で、話を進めるな」

「嫌やったら、あたしがシンデレラやるわ」

「いや、俺がやるっすよ、瑠璃さん」

「あたしが、シンデレラや」

「そこは、俺が」

「小鳥倶楽部か。わかった。この中之島正が、立派に務めてご覧に入れます」

「どうぞ」

「どうぞ」

「はぁ。何で、こうなるんやろうなぁ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ