第27話「星に願いを」
「程好く焼けたマシュマロを、ビスケットに挟む。これを初めて考案した人間は、只者ではないな。悪魔の発明だ」
「キャンプ・ファイヤーやって言うてるのに、地面に六芒星を書こうとした阿呆は、そういう発想しか出来へんのかいな」
「ええ感じに焼けたわぁ。あっと」
「気ぃ付けやって言うたのに。火傷してへんか、青衣?」
「大丈夫そうだが、流水に浸したほうが良いだろう」
「水道まで行こうか、青衣ちゃん」
「はい。じゃあ、行ってくるわ、お兄ちゃん」
「おぉ。悪いな、南方」
「燃ーえろよ、燃えろーよ。炎よ、燃ーえーろー」
「火ーの粉を、巻き上ーげ。てーんまで、焦がせー」
「お待たせ。何で歌うてるのん?」
「ボーイスカウトの性みたいなもんよ、青衣ちゃん」
「さて。星空を見るから、火を弱めるわな。今夜は昼間に続いて、よぅ晴れてるみたいやな。くっきりと、綺麗に見えとるわ」
「出でよ、星座早見表」
「これ、自分で作ったのん?」
「何年か前に、自由研究で作っとったものやね。夏休みの友とか、計算や漢字のドリルとかは嫌いやのに、こういうことになると、根気強う頑張るのんよ」
「よぅ、出来てるんと違うか? これが、春の大曲線で、ここが、大三角やろう?」
「何やのん、大曲線とか、大三角とかって」
「あたしも、星には疎いからなぁ」
「ひときわ強い輝きを放つ一等星が、この見当に二つあるだろう? 一つは、うしかい座のアルファ星で、アークトゥルス。もう一つが、おとめ座のアルファ星のスピカだ」
「ほんで、しし座の二等星のデネボラっていうのが、こっちにある、あの星やねんけど、その三つを結んだ形のことを、春の大三角って言うんや」
「この星が、あれで。こっちが、あの星か」
「昔の人は、よぅ考えたもんやね」
「あっ」
「ん? どないしたのん、青衣ちゃん」
「流れ星が見えたのであろう? 三回、願いを告げられたか?」
「迷信は、信じへんかったんと違うのんか、朱雀くん?」
「ええやん、ええやん。細かいこと気にしなや、春樹。また、流れへんかなぁ」
「結局、流れ星は、あれ一回限りやったか」
「運がええんやね、青衣ちゃん。クローバーの効果やろうか?」
「それは、どうやろうなぁ。着いたら起こしたるから、南方も寝ててええで」
「そう? あたしも、免許を持ってたら良かったんやけど」
「そういえば、冬彦が免許を取ったって言うとったな。夏にでも、一緒にどこか行こうか?」
「そうやね。秋ちゃんも夏に一度、こっちに戻るみたいやし。久しぶりに集まれたら、ええね」
「西園寺も戻ってくるんか。それは楽しみやな。おっと。ここは、右折か。お先に、どうぞっと。なぁ、南方。……南方? 寝てもうたんか。とーおき、やーまに、日ーは落ーちてー。ほーしは、そーらを 散ーりばーめぬ。……」




