第24話「未来予想図」
『お早う、お父ちゃん』
『お早う』
『お早う、春樹。春海。夏樹を起こしてきて』
『はい、喜んで』
『その真似は止めなさいって、この前、言うたところやのに』
『夏樹は、寝坊助やなぁ』
『誰かさんに似たんやろうね』
『俺の顔を見て言うなや、夏海』
『父ちゃん、母ちゃん、お早う』
『お早う、夏樹』
『お早う。顔は洗うたか?』
『まだや。でも、ええねん』
『ええことない、ええことない。早う、洗っておいで』
「お兄ちゃん、起きや。朝やで」
「んんっ。ロスタイムは、あと五分、残っとる」
「何を言うてるんよ。とっくに試合終了やって。えいっ」
「ぐえっ。脇腹を蹴るな」
「鉄脚制裁や。ドイツの偉い人や」
「それを言うなら、鉄血宰相や。ほのぼのとした、ええ夢を見ていたというのに」
「木曜日は、朝一番で必修の演習があるから起こしてくれって、お兄ちゃんが言うたんやで? リクエストに答えただけやん」
「暴力に訴えてもええとは、一言も言うてへん。はぁ。……いつか、正夢になるんやろうか?」
「ん? 何か言うた?」
「何でもない、何でもない。独り言や」
「へぇ。ボーイスカウトに入ってたんやね、春樹」
「カブスカウトで辞めたけどな。青衣も、ガールスカウトに入ってたんや。それより、南方がボーイスカウトに入ってたってことのほうが、俺にとっては驚きやな」
「あたしも、カブスカウトまでは続けてたんよ。後々、朱雀が入るからと思うて、様子見も兼ねて入団したんやけど、朱雀はビーバーで辞めてしもうたのんよ」
「ボーイスカウトの気風が、朱雀くんには合わへんかったんやろうな」
「ダンスもそうやし、少林寺拳法もそうやけど、身体を動かすのが好きやないみたい」
「そういう要素は、みんな、南方に流れてしもうたんやろうな。ん?」
「ねぇ、春樹。今日は、どうして目を逸らすのんよ。何か、隠してへん?」
「いや、そんなことは」
「ほら、また向こう向くやん。白状せぇへんかったら、緑帯の実力行使や」
「分かったから、落ち着け。それにしても、半端な色やな」
「白で辞めた朱雀よりは、ええやない。さぁ、はいて楽になり」
「デスクライトを向けるな。分かったって言うたやろう。ほんまに、朝から散々な一日や」




