第22話「名は体を表す」
「平日の昼間に自由な時間があるのは、小さい子と、学生の特権やね」
「あとは、自由業の大人ぐらいやな」
「うららかな春の日差し」
「のどかで、平和やな」
「あっちで遊んでるのは、幼稚園の子たちやね」
「黄色い帽子をかぶってるのんが、年少で、タンポポ組。水色が年中で、アジサイ組。桃色が年長で、コスモス組や」
「何で知ってるのん、春樹?」
「あのスモッグは、俺と青衣の通うとった幼稚園のなんや」
「へぇ。あ、モニュメントの上に、アジサイ組の子が」
「ほんまや」
「昇くん。登ったらあかん」
「クッ。今のは、出来すぎやな」
「名前がノボルやのにね。あっ、こっちに来た」
「二人で何してるのん?」
「何してるように見える?」
「質問に質問で返すのは、卑怯や。昇が先に聞いてるんやで。往生際が悪いなぁ」
「どこで覚えたんか知らへんけど、使いかたを間違うてるで」
「ええから、答えてくれへん?」
「大学の講義が、休講になったから、図書館で時間を潰しとったんやけど」
「そこで、午後から授業のない、あたしに会うて」
「天気も良いし、公園に行こうってことになったんや」
「フーン。ダイガクのコーギって奴は、急行になるのか。その前は、普通だったのか?」
「ちゃうちゃう。休講っていうのんは、お休みになることや。幼稚園かって、台風が来たり、インフルエンザが流行ったりしたら、お休みになるやろう?」
「そうか。お休みなのか。ええなぁ」
「何が、ええんや?」
「先生に怒られたり、父ちゃんや母ちゃんに五月蝿く言われたりせんと、好きなこと出来るんやろう。ええやん」
「そうか。昇くんは、一人で好きなことが出来へんのか」
「そうやねん。あれもあかん、これもあかんって」
「ハハハ」
「こら、昇くん。駄目やない、みんなと一緒に居らな。どうも、すみません」
「いえいえ。面白い子ですね」
「他人様に、ご迷惑ばかりかけて。ほら、行きますよ」
「またな、兄ちゃん、姉ちゃん」
「またね、昇くん。――腕白な子やね、春樹」
「またな、昇くん。――生意気盛りなんやろうな、南方」
「そうやね。コンビニで、アイスでも買わへん?」
「せやな。そうしよう」




