第20話「過渡期」
「懐かしいものが、出してきたものやなぁ」
「独楽に、面子に、おはじき」
「どれも、奪い合いをせぇへんことが、遊ぶ上での約束やったな」
「花札、麻雀、囲碁、将棋、トランプ。このへんは、今でも使うてるわ」
「賭けに使わへんことが、条件やけどな。どっちも、厳密には法に触れる行為やからな」
「そうなんや。悪いことはできへんね」
「そうやな」
「ちょっと、春樹、青衣。手を止めて、思い出に浸ってる場合やないのんよ?」
「そうやった。学童保育に持っていこうって話やった」
「学童のおばちゃんには、お世話になったもんねぇ」
「この塗り絵とか、粘土とかも、箱に入れといてちょうだい」
「了解。三枚目で挫折したんやなぁ、この塗り絵」
「飽きっぽいんやね、お兄ちゃん」
「青衣のやで、これ?」
「うち、こんなん使うた覚えないわぁ。――この粘土、硬うなってしもうてるけど、ええんかなぁ?」
「忘れてるだけやろう。――ええんやろう? 使えるか使われへんかは、こっちで決めることやないのんやから」
「そうやね。おばちゃんに決めて貰うたらええわ。よし。終わった、終わった」
「疲れたな。テレビでも観ようか」
「パワー、オン。最近、映るまでに時間が掛かるねぇ」
「そろそろ、買い替え時やな。あぁ、点いた、点いた」
『アメリカ、ミクロ社の人工知能が、差別発言を繰り返したそうですね』
『インターネット上には、差別発言が溢れているということでしょうかねぇ。人工知能には、善悪は判断できないのでしょう』
『インターネット依存症の子供ようなものですね。一方、日本の人工知能は、オタク化が進んでしまったとか』
『日本語のサイトには、オタクが幅を利かせているという証左ですね』
「ニュース討論やな。もう、そんな時間やったか」
「おじさんばっかりやね。他の番組にしようか?」
「ご苦労さん。今日はもう、夕食の支度してる時間がないから、外食でええわね?」
「よっしゃ。ほんなら、出掛ける準備しようか、青衣」
「やった。パワー、オフ」




