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トリオとコンビ  作者: 若松ユウ
第2部
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第19話「認知的不協和」

「ほら、ちゃんと押さえへんから」

「姉上が、雑に持つからではないか」

「あたしは、雑やないって。ほら、もう一回」

「やり直しか。そろそろ休息を取らねば、身体が持たないのだが?」

「あのさぁ。何で朱雀が押さえで、あたしが十字に縛るほうなのんよ。逆やと思わへん?」

「うさぎは、熊狩りには勝てないからな」

「誰が、マタギや。それに、うさぎっていうより、狐やないか」

「あの葡萄は、酸っぱいに違いない、とでも? フッ。熊を捕まえたことがあるくせに」

「あたしが捕まえたのんは、熊みたいに毛むくじゃらなスリや。熊を捕まえても、警察署で表彰されたりせぇへん」

「ほう。不合理を正当化するために、記憶が改竄されたようだな」

「改変されてるのんは、朱雀のほうやないの」


「ほんまに、朱雀には、男子としてのプライドがないんやから」

「傍で聞いてる分には、微笑ましい光景やけどなぁ」

「他人事やと思って。春樹のところは、どうしてるんよ?」

「どうって、何がや?」

「話の流れから、大体わかりそうなもんやん。新聞を出すときのこと」

「あぁ。大抵は、俺が一人で出してるんや。青衣に手伝わせると、二度手間になるからな」

「押さえて貰うといたら、ええようなもんやけど?」

「それがな。青衣は、自分で括りたがるんや。せやけど、青衣の力では、本人がどれだけ頑張っても、どっかしら緩くなってしまうから、任せられへんし」

「へぇ。傍で聞いてる分には、微笑ましい光景やね」

「まったくな」

「レポートは進んでるのん? たしか、社会心理学で課題が出たって」

「あぁ。どうやって、まとめたらええか、いろいろ悩んでたんやけど、今の南方と朱雀くんの話を使うたら、うまくいきそうや」

「名前は出さんとってよ」

「当たり前や。個人情報保護法に抵触する気は、少しもあらへんからな」


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