第15話「深まる謎」
「観覧車に乗ってると、急に動きが早うなったり、遅うなったりするように感じることってないっすか?」
「わかる、わかる。乗った始めのほうは、ゆっくりやねんけど、途中から早うなって、てっぺん近くでは、もう一度ゆっくりに戻るけど、下り始めると、また早うなるように感じるんやろう?」
「そうっす。ゴンドラが円周上を運動する速度は、どこでも一定っすよね?」
「当たり前や。せやないと、ゴンドラが渋滞してしまうからな」
「それなら、あれ、何でなんっすかね?」
「それは、前後に動いたときより、上下に動いたときの方が、身体が敏感に反応するからや。時計回りに円運動する場合、観覧車を時計の文字盤とすると、十一時から一時にかけてと、五時から七時にかけては、前後の動きが優勢やから、あまり動いてるように感じへんけど、二時から四時にかけてと、八時から十時にかけては、上下の動きが優勢やから、ぎょうさん動いてるように感じるってわけや」
「中に居てもわからなかったんで、適当に答えたんっすけど、そう考えれば良かったんっすね、会長」
「適当って、何て答えたんや、樟葉?」
「アインシュタインの相対性理論っすよ。中と外では、時間の流れが違うって言うたっす」
「そんなんで、時間旅行できる訳ないやないか」
「ウラシマ効果とか、ワームホールとか、何かよくわからない理論で仮定された条件が、全て満たされないと駄目なんっすよね?」
「そうや。そんな簡単に時空を超越できるんやったら、誰でも超越してるやろう」
「理論は、さておき。未来では、タイムトラベルが可能になってるんっすかねぇ」
「そうやとしたら、未来人が現代に居らへんと、おかしな話やないか」
「そうっすね。何とか伯爵みたいな人っすね」
「サンジェルマン伯爵か?」
「たぶん、それっす。もし今から好きな時間と場所に移動できるとしたら、会長は、いつの、どこに行きたいっすか?」
「未来の富良野に行って、ラベンダーを探すわ」
「時空を超越する少年っすね。エスエフの定番」
「定番といえば、宇宙人の存在も定番と違うか?」
「ベタな定番っすね」
「悪かったな、ベタで。ドレイク博士に謝れ」
「アマルダ海戦の船長っすか?」
「ちゃう、ちゃう。銀河系で、人類とコンタクトする可能性のある地球外文明の数を、七つの変数を掛け合わせれば、確率として求めることができると推測した博士や」
「それで、どれくらいの確率なんっすか?」
「それは、わからへん。方程式は出来たんやけど、変数がわからへんから」
「何や。わからへんことばっかりっすね」




