第13話「高校生クイズ」
「マイクを持つと、司会者っぽくなるなぁ、副長」
『我輩の辞書に、不可能の文字はない』
「取りあえず、問題を出してくれるか? 会長には勝たれへんやろうけど」
「始めから、逃げ腰ではあかんで、樟葉」
『問題。該当するものを、すべて答えよ。木星の衛星のうち』
「はい。イオ、エウロパ、ガニュメデ、カリスト」
『正解』
「ガリレオ衛星っすね、会長」
『では、天王星の』
「ミランダ、アリエル、ウンブリエル、ティタニア、オベロン」
『正解』
「今度も衛星なんか、副長?」
『天王星の五大衛星を答えよ、という問題だったのだ。続いての問題。ローマの平和』
「はい。ネルウァ、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウス・アントニヌス」
『正解』
「五賢帝っすね」
『人体では生成できないとされている』
「はい。フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、スレオニン、ヒスチジン、トリプトファン、リジン、メチオニン」
『正解』
「何っすか、それ?」
「必須アミノ酸や。本番までには、覚えとけよ」
『南総里見八犬伝で』
「はい。仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌」
『正解』
「八つの徳目っすね。いつも、後半が曖昧になるんっすよ」
「それでは、困る」
『では、天武天皇が六八四年に制定した』
「はい。真人、朝臣、宿禰、忌寸、道師、臣、連、稲置」
『正解』
「八色の姓っすね」
『歴代の女性天皇の中で』
「皇極天皇と斉明天皇、孝謙天皇と称徳天皇」
『正解』
「何っすか? 共通点は?」
『重祚した天皇の名前を答えよ、という問題だったが、我輩にも理解できていない』
「同じ人が二回、天皇になったってことや。日本史も、しっかり押さえときや」
『すべて答えよ、という問題は以上だ』
「アルファベットの頭文字を、略さず言うとって問題もあったと思うんやけど」
『見当たらないな』
「別の本なんやろうか。例えば、どういう問題があるんっすか?」
「ビー・ティ・ビー溶液とか、殺虫剤のディー・ディー・ティーとか、国内総生産のジー・ディー・ピーとかや」
「ちなみに、答えは?」
「ビー・ティ・ビーは、ブロモ・チモール・ブルー。ディー・ディー・ティーは、ジクロロ・ジフェニル・トリクロロエタン。ジー・ディー・ピーは、グロス・ドメスティック・プロダクト」
「それだけ、色んなことを知ってはるのに、女子の心は、わからないんっすね」
『会計殿いわく、書記殿を怒らせたとか。その件で、お話を伺いたい』
「えぇい。マイクを、こっちに向けるな」




