第12話「ワレモノ注意」
「瑠璃ちゃん。お願いがあるんやけど」
「華梨那、どないしたん? そんな、思い詰めた顔して」
「他に頼める人が、居らへんから」
「こっちやと、廊下の男子の視線があるから、そっちに座るわ。……言うてごらん」
「預かって欲しいねん」
「何や。毎月のアレと違うたんか。ほんで、預かるって、何を?」
「その、部室に、ダンボールに入れて置いてあるんやけど、新しい部員も入ったことやし、受験生やし、忙しくなると思うから、時間を割かれへんと思うんよ」
「そう、外堀から言わんと、本丸を言うてみぃよ。何を言われたって、華梨那の味方になるから」
「そんな、大そうなことと違うのんよ。ただ、その」
「華梨那。そろそろ切りださな、協力せぇへんよ? 箱の中身は、何なんよ?」
「原稿用紙。同人誌の」
「ほぅ。ええよ」
「ほんまに? おおきに、瑠璃ちゃん」
「これは?」
「台車やけど?」
「そうやなくて」
「用務員のお兄さんに、ダンボールを運びたいって言うて、借りてきた。ほら、今度、新しく来た」
「あぁ、伊丹さんに。でも、そこまでぎょうさんあるわけと違うのんよ、瑠璃ちゃん」
「そうなんや。まぁ、それでも、あったほうが便利やから」
「その紙袋は?」
「購買で、小林さんにちょっと無理言うて、梱包用のビニールを貰うてきた。濡れたらあかんやろう?」
「そこまで厳重にせんでも」
「万が一ってこともあるやない。それで、あたしと華梨那の仲が壊れたら嫌やし。備えあれば、憂い無しや」




