第10話「カウンター」
「それでは、今月の図書委員会を始めます。一年生も居るので、簡単に紹介します。向こうに座ってはる先生が、この高校の図書司書の岡本先生。そして、あたしは、生徒会執行部の書記で、図書委員担当の千林瑠璃と言います。これから、毎月一回、こうして集まって今月の目標を決めたり、行事での役割分担を決めたりしますから、くれぐれも、欠席しないようにしてください。今日は、まず、カウンター当番を決めたいと思います」
「一緒の時間になって良かったわ、朱雀くん」
「誰も、放課後に当番をしようとしなかったからな。少数精鋭というのも、悪くない。それにしても、図書委員は、書記殿の担当であったか」
「知り合いなん、朱雀くん?」
「姉上が、先代の生徒会と親密であったのでな」
「ふぅん。顔の広いお姉さんなんやね」
「あちこちに災難を撒き散らす、トラブルメーカーであるがな。ところで、一組の担任は、誰だったかな?」
「野田先生よ」
「国語の?」
「そうよ。二組は?」
「大石先生」
「あぁ、数学の。あんまり授業に熱心やない気がするんやけど、担任としては、どうなん?」
「その評価は、間違ってないな。ホームルームも簡潔だ。面倒くさがりなのかもしれない」
「話が長いより、なんぼかええけどね」
「美術部って、部員が二人だけなんですね、部長さん」
「三月までは、幽霊部員が二人おったんやけど、卒業してしもうたんよ、冴絵ちゃん」
「部長さん。南方朱雀って生徒を、ご存知ですよね?」
「あぁ、朱雀くんね。夏海さんっていうお姉ちゃんが居るのんよ。ちょっとした切っ掛けで、夏海さんと知り合うてね」
「それで、部長さんは、朱雀くんって、どんな人やと思うてはりますか?」
「どんなって言われても。そうやねぇ。みんなが桜を見上げてるときに、菫や蒲公英を愛でてるような感じやね」
「天邪鬼ってことですか?」
「天邪鬼とは、違うなぁ。旋毛曲がりとか、捻くれ物とかいうのとは、しっくり来ぇへんのんよ。冴絵ちゃんは、どない思うてるのん?」
「何を考えてるのかわからない、ミステリアスな人やなって」
「ミステリアスか。一筋縄では行かないさそうなところは、間違うてないかもね」




