第1話「式の準備中」
「久しぶりやね、秋ちゃん。向こうでは、上手くいってるみたいやね」
「久しぶり。まだ、慣れへんところも多いのんよ、夏海ちゃん」
「おめでとう、西園寺さん」
「北条くんこそ、おめでとうさん。志望大学に、合格したんやってね」
「私学のほうだけどね。キャンパスが遠いから、四月からは、滋賀で一人暮らしするんだ」
「あたしは、近くの短大やから、しばらくは、まだ実家なんよ。羨ましいわぁ」
「南方も、実家通いか。俺は、公立大やから、少し遠いけどな」
「春樹くんも、久しぶりやね」
「久しぶりやな、西園寺。制服、おおきに」
「制服って?」
「青衣ちゃんが、四月から中学生になるから、うちが着てた制服をあげたんよ」
「そうか。青衣ちゃんも、もう中学生になるんやね」
「ご卒業、おめでとうございます、皆さん」
「おおきに。中之島くんも、久しぶりやね」
「僕は、自由登校中に、時々会ったよ」
「その腕章は何や、中之島?」
「あぁ、それは、あたしがあげたんよ。記者倶楽部隊長ってことで」
「四月から、新副長も入部しますからね」
「どういうことなん?」
「あ、そうか。西園寺さんは、知らないか」
「南方と入れ替わりで、朱雀くんが入学するんやけど、腕章までは知らんかったな」
「左投げ左打ちの孤高の天才、南方だけにサウスポーとか言うて、利き手とは反対の腕に、副長の腕章をつけてるんよ」
「まさに、隊長の右腕ですよ。これで、樟葉を追い越してやるんです」
「背を抜かされたことを、そんなに気にしてたんっすね」
「まだ準備は終わってないのんよ、新会長」
「身長の話と違うわ。二人のせいや」
「中之島くん。樟葉くんと千林さんに、何かされたのん?」
「ちゃうねん、ちゃうねん。二人が付き合うことになったんが気に入らへんだけなんよ、秋ちゃん」
「ただの、逆恨みだよねぇ」
「まったく、その通りやな。見返すなら、自分も彼女を探したらええのに」
「探して見つかるなら、いくらでも探しますよって」
「ええから、早う会場に戻ろうな、新会長」
「そうっすよ。持ち場を離れたら、怒られるっすよ?」
「えぇい、両サイドから腕を持つな。これやったら、捕らえられた宇宙人やないか」




