第10話「連鎖反応」
「ここ、分からへんねん」
「俺もそこは、分からへんかったんやけど」
「えぇ?」
「ん?」
「ほんなら、何しに来たんよ」
「お前が呼んだんやろうが。まぁええわ。冬彦に聞いてみるか」
「あたしは秋ちゃんに聞くわ」
「あれ、店の手伝いしてるんかなぁ。繋がらへんからメールだけ送っとこう」
「秋ちゃんも、あかんみたい」
「夏海。あんたにお客さんよ」
「はぁい。誰やろう?」
「じゃじゃーん。世界の救世主、中之島正、ただいま見参」
「やかましいのが来たわ」
「普通に登場せい」
「中之島の登場によって降り注ぐ集中線が見えませんか?」
「見えへんなぁ」
「漫画の読みすぎや」
「おっと、勉強中やったんですか。その問題の答えは三番です」
「いや、答えは分かってんねん。何で三番が正解なんかが分かれへんから、困ってるんや」
「あの鉄の女は、選択肢やなくて記述で出すから、丸暗記では役に立たへん」
「理由は簡単ですよ。一番は総議員数やなくて出席議員数、二番は過半数やなくて三分の二以上、それから、四番は参議院やなくて衆議院です」
「ほんで、残った三番が正解なんやね」
「せやけど、よぉ覚えてるなぁ」
「スパコン並みのハイテク脳です」
「それは言い過ぎやろう」
「副長の虚言癖は、今に始まったことやないで。ところで、今日は何しに来たんや?」
「隊長の知恵を拝借したく、参上仕り候」
「普通に言わんかいな。それこそ、自慢の演算処理能力で、ちゃっちゃと解決したらええやないの」
「せや、せや」
「こと美術に関しては、まったく能力を発揮できないもので」
「一年の今頃やったら、デッサンやな?」
「ちょっと、見せてみ?」
「恥ずかしながら……」
「これは、……何と言うたらええか」
「……はじめてのお絵かきって感じやな」
「お待たせ、東野くん、南方さん」
「ちょうどええタイミングや」
「美の巨匠が現れたな」
「副長くんまで揃って、何してたの?」
「メシアよ、憐れな仔羊をお救いください」
「ちょっと放してよ。ねぇ、どういうこと?」