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病弱勇者  作者: ウケッキ
3/5

第3話 『鏡也とベスティア』

今回から色々と苦手な人には苦手な描写がちょいちょい入ってきます。

そういうのは無理だなーと思う方は回れ右です。

大丈夫という方だけこの先のお話へお進みください。

 それは幼き日の記憶。

 小さな少年が誰かと公園で遊んでいる。友達だろうか。

 走り回り、飛びまわり……幼い子供らしい身体全体を使った遊びを堪能する。

 しかし、その楽しい世界は得体の知れない何かによって突然壊されてしまう。

 前触れもなく空間を割る様に出現した得体の知れない何かは子供の一人を掴むと力任せに投げ飛ばす。

 投げ飛ばされた子供は意味も分からず、勿論受け身なども一切取れずに地面へと叩きつけられた。

 ぐしゃりと鈍い音を立てて地面に転がった、先程まで一緒に遊んでいたであろう友達はピクリとも動かない。

 地面には赤い液体が広がり、地を真っ赤に染めていく。

 悲鳴が上がる……共に遊んでいた女子の幾人かが叫び声を上げたのだ。

 得体の知れない何かは声の方へ振り向くと同時に口から熱線を放つ。

 必死に逃げるが子供の足では間に合わず、女子は断末魔の叫びを上げながら黒く、黒く……焦げていく。

 得体の知れない何かは一人、また一人と彼の友達を手にかけていった。

 見ているしかできなかった彼の心に恐怖以外の何かの感情が湧きあがる。

 怒り……ではない、彼は気づいたのだ。

 そう、自分だけが今のこの場で奴を何とかできると。

 立ち上がった彼の表情に既に恐怖の色はない。

 あるのは絶対に自分が何とかしてやるという強い心。

 彼は走った。一直線に。

 得体の知れない何かは、彼に気づくと熱線を再び放つ。

 真っ直ぐに伸びた高温の熱線を空中へジャンプして躱すと彼は振り被る様にして右手を振り上げた。

 右の手に光が収束し、それは一振りの剣となる。

 眩い輝きを放つその剣をしっかりと両手で握ると力のままに彼は得体の知れない何かに振り下ろした。

 輝く光の剣は得体の知れない何かを縦に両断すると同時にその体を光の粒子へと変え、消滅させた。

 一息ついた彼の手から剣が消えると同時に、彼は体の激痛に耐えられずその場に倒れ込んだ。

 体がバラバラに引き裂かれるような激痛に意識が薄れていく。

 遠くで救急車の音と大人達の声が聞こえた気がしたが、それを正しく認識する前に彼の意識は闇へと沈んでいった。





「う、く……?」


 目を覚ました鏡也の視線に入ってきたのは見た事もないような豪華なシャンデリアと室内の華美過ぎるとも言える装飾品の数々であった。

 明らかに自分が生活してきた場所でない事を悟る。


「夢じゃ……なかったのかよ」


 そこで彼は口まわりがすっきりしている事に気が付いた。


「な、呼吸器がない……っ!? ど、どこにいったんだ……!」


 長年自分の生命をこの世に繋ぎ止めていた相棒とも言える機械の姿はどこにもない。

 そればかりか医療機器といえるような物は一切、周囲に存在していない。

 あるのは中世を思わせるエンドテーブルやタンスなどの室内装飾品でそのデザインは見た事もないクリスタルで装飾され、不思議な光を放っている。まるでファンタジーの世界そのものであった。


「一体何が起きて……というか、こ、呼吸できて……いる!?」


 そう、長年不可能であった自力呼吸をしている自分に彼は気が付いたのである。

 呼吸といってもそれは弱々しく、一般的な呼吸と比べるとずいぶんと頼りないものであった。

 彼は浅く呼吸しながら、意識を失う前の事を思いだそうとした。


「はぁ、はぁ……確かいつも通り病院で寝てたら、見知らぬ爺さんがコスプレで……」


 首をゆっくりと右へと向ける。

 大きめな窓が開かれ、爽やかな風を運んで来ていた。優しいその風は静かにカーテンを揺らす。

 そこに黒く長い髪の少女が背中を向け、立っている。

 黒髪といっても完全な黒ではなく、その髪色は毛先にいくにつれて黒から綺麗な紫色へと変化していた。

 着ている服装は巫女服の要素が入ってはいるが、巫女服よりも遥かに露出が高くその色は薄黒色で帯や裾の縫いこまれた紐部分には黄色の装飾が施されていた。お尻に位置する部分はすっぽりと大きなリボンで隠されている。

 その服は巫女服から動きにくいひらひらした部分を削り、動きやすさと通気性を重視したかのようなものであった。


(かなり目のやり場に困るな……露出高すぎだろッ!)


 大きく開いている服の脇部分からは何もつけていない横乳が丸見えであり、動きに合わせてふよふよと動く。

 腰回りに至っても背面や前面は隠されているが側面に至っては太ももが丸だしであり、はいている下着の類が見えている。


(さっきの子……だよな。隣にいた、美少女。名前、何だったかな……)


 黒髪の少女は鏡也の視線に気づいているのかいないのか、窓際に置かれた観葉植物の世話をしている様だった。

 観葉植物への水やりを終えると彼女は振り返り、その口を開いた。


「お目覚めですか? 勇者様っ!」

「……は?」


 彼女の言ったことを理解しがたい鏡也は素っ頓狂な声を小さくあげる。

 そんな鏡也の様子などお構いなしにぐいっと寄ってきた少女は自己紹介を始めた。


「お初にお目に掛かります、私はメーディウム家の長女、ベスティア・メーディウムと申します。以後、お見知りおきを」

「あ、ああ……俺は御中鏡也だ」

「鏡也様、ですねっ! なんと良い響きなのでしょう。やはり異界というのは私共の世界とは感性が違ったりするのですね」


 赤い血の様な瞳を輝かせながら明るく喋る彼女の言葉に『異界』という単語を見つけた鏡也はすかさずそのことを彼女に聞いた。


「悪いんだけど……異界って何の事なんだ? それにここは一体……」

「あ、そうでしたそうでした。鏡也様はこの世界の事を何も知らないんですものね」


 そういったベスティアはベッドの片隅に腰かける。形のいい太ももが目と鼻の先に晒され、鏡也はなるべく視線がいかないように努めた。


「今、鏡也様がいらっしゃるのはアルデバラン王国の首都、王都アルデミラです。私達の国は亜人と人間の共存を掲げていますので、国内では亜人と共生する人間も多くみられます。ですが隣国のエルタ帝国は徹底した人間至上主義を掲げていますので、向こうでは亜人の奴隷などもいるそうです」


 ベスティアによればこの世界には大きな大陸が二つあり、それぞれの大陸に大きな国が一つずつあって、東のアルデバラン王国、西のエルタ帝国となっているようだった。

 二つの国は時にぶつかり、戦争を起こした事もあったがここ二百年辺りは戦争の気配はないという。 

 亜人と人間の共存主義と人間至上主義。相容れない二つの国は現在、相互不可侵という条約のおかげで辛うじての平和を保っている様であった。


「そして異界、鏡也様の世界から勇者となり得る人物を呼ぶことが勇者召喚というものです。力のある者を呼ぶとはいっても、二国間には先程説明した通り……平和が続き、戦争等はしばらく起きていませんので戦争に投入される、なんてことはないのでご安心ください」

「平和……ん? ちょっと待てよ、平和ならなんで勇者召喚なんてやったんだよ? 平和な世界なら……勇者なんて必要ないじゃないか」

「それは違います。勇者と相対するもの――――魔王の復活の兆しが予見されたのです。魔王に抗する事が出来るのは勇者のみ。そう言い伝えられていますから」

「魔王? それってまさかファンタジー物でお約束の魔族の王とかいう……」

「いえ、ふぁんたじー? というものが何を指しているのかはわかりませんが魔王というのは強大な魔力を持った人間の事です。まぞく? とかいうよくわからないモノではありませんよ」


 ベスティアが言うには魔王とはこの世界に邪悪な意思によって導かれ、生まれる強い魔力を持った人間で、世界に害成す者ということだった。

 この世界では今まで何度となく魔王が現れ、世界を危機に陥れたという。

 伝承によれば、その度に魔王を倒す為に勇者が召喚され彼らが魔王を討ち果たし世界に真の平和をもたらしたらしい。


「それで倒した勇者達はどうなったんだよ? 自分の世界に帰ったのか?」

「そうですね、自分の世界に帰った方もいればこの世界に残って国の要職に着いたり、一般市民として平和に過ごしたり、平和になった世界を放浪する旅人になったり様々だったようです」

「ありがちな自分の世界に強制送還って感じじゃないんだな……」


 はぁっと溜め息をつく鏡也はいまだ自由に動かない身体の事を思う。

 そして沈んだように言葉を吐いた。


「ごめん、俺は……見ての通りだからね。その魔王っていう相手に対して戦えもしないし、どう考えても役に立てそうにない。元の世界にさっさと――――」

「それは無理なんです」

「……え? 帰った人もいるなら、俺を送還することだって……」

「それは昔の話で、今は勇者召喚の方法もましてや送還方法だってわからないんです……さっきの召喚も王家に伝わる秘宝の破壊と引き換えに辛うじて発動したのですから」


 元の世界に帰れない。

 この事に関して鏡也は嘆くことも、悲しむこともしなかった。

 元より元の世界では病院に繋がれ、ただ日々を『生きている』だけの生活。

 自分で何かをすることも、何かが起きる事もない日々。

 家族はもう既に疎遠になって久しい。

 幼い頃、一人では生活できなくなった自分を捨てる様に病院へ放り込み、ほっとしたような表情を浮かべた両親の顔。それが鏡也が覚えている唯一の家族の記憶であった。

 帰る場所はない。

 あの世界に自分の居場所はないのだ。


「帰れない事はいいんだ。どうせ家族なんていないようなものだったしな。でも……俺は、戦えないよ?」

「今は戦えなくても……きっといつか、戦えるようになるはずです。鏡也様が一体どのような病に倒れていたのかは私にはわかりませんが、現に徐々にではありますが回復しているのではありませんか?」


 確かにベスティアの言う通りであった。

 元の世界では人工呼吸器を外せば数秒と持たない身体、栄養も点滴頼み……身体を動かす事なんて夢のまた夢。

 そうだった自分が今は自力で浅いながらも呼吸をし、まだ首だけだが自力で動かしているのである。

 回復しているというのは否定できないであろう事実であった。


「とはいえ、動ける様になって……それから戦いのド素人である俺が戦いを覚えて……か。そんなに魔王ってのは待ってくれるもんなのかね?」

「それはもう……運頼みかなって思います。でも安心してください、鏡也様の身はこの命に代えましてもベスティアがしっかりとお守りいたしますので!」

「いやいや、そこまでしてもらわなくても……」


 流石に命に代えても、は言い過ぎだとばかりに鏡也はその申し出を辞退しようとしたがぐいっと顔を近寄らせたベスティアによってそれは遮られた。

 お互いの息がかかる程の距離でベスティアは赤い瞳を潤ませている。


「いえ! 誰が何と言おうと、私は勇者である鏡也様をお守りします。それが我が一族の悲願なのです。私の一族の先祖は……古の勇者様に返し切れない程の恩があります。その恩に報いる為、一族の者はありとあらゆる生活の術、戦いの術を叩き込まれるのです。そして、勇者様が召喚された際に男性であれば女性が、女性であれば男性の一族の最も優秀な者が勇者様の元へと送られるのです」


 興奮気味に話すベスティアの眼は妖しく輝き、話を中断させる暇すら与えてはくれなかった。

 更にベスティアは鏡也に馬乗りになると自身の身体をゆっくりと撫で回していく。

 その姿は淫靡という言葉がふさわしい程に妖しい魅力にあふれていた。


「私達は文字通り、身も心も勇者様に捧げる所存なのです。ですから……なんなりとお申し付けください、鏡也様」

「え、あ、と……」


 自覚があるのかないのか、急に積極的な態度を見せたベスティアに対し鏡也は戸惑っていた。

 幼き日に病院へ入院した為、ろくに女性との会話をしてこなかった彼はこういった状況に慣れていない。というよりも業務で接してくれていた看護師達と違い、明らかなる好意を持って接してくれる女性など生まれて初めてなのである。

 そんな彼にいきなりなんなりと申し付けろ、と言った所で申し付ける事など思いつくはずがなかった。


(やばいやばいやばい、近いよ、太もも軟らかいよ! しかもなんかいい匂いまでするし! 女の子ってこうなのか!? それに申し付けろってなに!? ああ、もう何も思いつかないーーっ! とはいえ……ここで何も言わないのは拒絶したみたいで傷つけちゃうよな……うぅ、どうすりゃいいんだ!)


 ぐるぐると頭の中で色々と考えていた鏡也はやっとの思いで彼女にある事を申し付ける。


「あの、さ。これから一緒にいて守ってくれるのはいいんだけど……その敬語をやめてもらえないか? かしこまった言い方ってどうも苦手なんだよ」

「え……あ、はい。そんなことでいいのですか……?」

「ほら、敬語になってるよ。もっと普通に頼む」

「あ、えっと……はい、鏡也さん。こんな感じでいいんですか?」

「あんま変わってないけど、変にかしこまった言い方が無くなったからまあ、いいか」

「?」


 変化を余り自覚していないらしく、首を軽く傾けて頭にはてなマークを浮かべるベスティアを見て鏡也は心の中でガッツポーズをする。


(やっぱすっごく可愛いっ! なにこの美少女! 動けたらなぁ、抱き着いてたかも……いや、無理か)


 抱き着きたい衝動はあるが、女子への耐性が皆無の自分を顧みて出来ないと判断し鏡也は心の中で自嘲する。

 その直後であった。

 ふと、鏡也は自身の股間に何かが込み上げてくる感覚を覚えた。


(これはまさか……尿意! いかん、ここは病院じゃない……ましてや看護師もいない……自分でも動けない)


 そう生きとし生ける者、誰もが訪れる当たり前の生理現象。

 本来であれば自ら排泄しにトイレなりへ行けばよいのだが……動かせるのは首のみである鏡也には到底無理な話である。

 それならばどうすればよいか。


(……なんなりとお申し付けください)


 ベスティアの言葉が鏡也の頭をリフレインする。

 そう、頼んでしまえばいい。なんとかしてくれ、と。

 しかし相手は勇者に心身を捧げるとまで言った少女である。下手をすれば幻滅するのではないか。

 そのようないらぬ心配が頭に過り、彼の決断を鈍らせていた。


「どうしたんですか? もしかしてどこか痛むとか!」

「いや、違うんだ……そういうわけじゃなく……!」


 ひとたびの沈黙。

 切羽詰った表情から察したのか、ベスティアの視線が鏡也のある部分にロックされた。


「あの……もしかして、お、おトイレ……ですか?」

「………………はい」


 そして再びの沈黙、ベスティアの顔が真っ赤に染まる。


「えと、あの、その! う、動けないってことは……えっと、自分で……できないん、ですよ……ね?」

「…………………………はい」

「い、いいんですよっ! 遠慮なんてしなくって! 生理現象は誰にでも起こりますし、トイレとかその、当たり前ですし!」


 平静を装っているがベスティアの瞳はあらゆる方向に向けられ、落ち着きがない。

 この後の事を考えれば当たり前と言える反応だった。

 視線の端に大きめの空の花瓶を見つけたベスティアは意を決したのか、それを掴むと再び鏡也の元へ戻り足の間に入る様に座った。


「い、いきます……っ!」

「ちょっとま……俺、まだ心の準備がッ……!」

「えぇーーいっ!」


 すぽぉーんっという小気味いい音を鳴らすが如く、鏡也のズボンは脱がされた。





「……結構大きいんですね、鏡也さん」

「言わないで、恥ずかしいからッ!」


 尿意が去り、恥ずかしさと情けなさに顔を赤らめる鏡也と恥ずかしさはあるがそれとは少し違った意味で惚けているベスティア。

 お互いの赤面の理由の違いに気づかないのは、二人の経験の浅さゆえなのかも知れない。


(あんな大きなもの……入るんでしょうか……謎です、神秘です。でもきっといつか、試してみればわかりますよね……?)


 自分の下腹部を優しくゆっくりと撫でるベスティアの妖しい視線に気づくこともなく、鏡也はいまだ続く恥ずかしさと情けなさで枕に顔を埋めるのであった。

いやーまさか最後であんなことされるとは。

きっと彼は入れる穴があったら入りたい、なんて思ってたかもしれないですね。

この話以降は戦闘描写やちょいエロ描写、生理現象描写(こればっかりは頻繁じゃないですけど)が入ってきますので苦手な方は注意しながらお進みください。

大丈夫だという方はベスティアさんの為に花瓶を持ってお進みください。

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