第1話 『史上最弱勇者の冒険譚』
始まりました、病弱勇者。
今まで語り継がれるどの勇者よりも弱いというか、病弱な彼はどんな冒険を繰り広げていくのでしょうか。
それでは、お話の世界へいってらっしゃいませ!
(…………白い天井だ)
彼は日課となった呟きを声に出さず頭で考える。
頭で彼が考えるのは、口に出して呟くことができないからだ。
なぜなら彼の口には人工呼吸器――機械の力で呼吸を助ける医療機器を差す――が装着されているのだから。
部屋は真っ白な壁と天井で構成されており、余計な家具などはない。
当たり前である。ここは彼の病室なのだから。
ベッドに仰向けで寝転がる彼の身体には何本ものコードが伸び、点滴用の管が腕へと刺さっていた。
黒い髪は清潔感を感じる程度に切り揃えられ、頭の上のネームプレートには彼の名前である『御中 鏡也』という文字が記されている。
彼がちらりと視線を移動し、点滴のパックを見るともう少しで中身が無くなりそうであった。
(そうか……そろそろ交換の時間、ということは昼ごろだろうか)
仰向けの状態で身体を自らの力では一切動かす事が出来ない彼は時計を見る事が出来ない。
それ故に何かが無くなるから交換、誰かが定期的に来るタイミング等で彼は時間を計っていた。
特に時間を認識する事に何の意味すらないのだが……確認したくなるのはかつて周囲の者達と何ら変わりなく生活していた事の名残なのだろう。
そう、彼は何も最初から病室で寝たきり生活を強いられているわけではないのだ。
(昼か……まだ半日あるんだな。)
漠然と一日の残り時間を考える。特に意味のない事ではあるが、暇つぶしと言えばこれぐらいしか彼にはない。漫画やテレビ等を見ていた頃もあったが、それはもう過ぎ去りし遠い昔の事である。
鏡也は目をゆっくりと閉じる。暗い闇が広がり、周囲の音だけが彼の耳に届いていた。
ふと、そこでおかしなことに気が付く。
いつもは聞こえるはずの病院のナース達の談笑、医者の話声……隣室に入院している子供達のうるさすぎる様なじゃれ合いの声、そのどれもが彼の耳に届いていないのだ。
(ついに耳までいかれたか。音がない世界ってのはより一層つまらなくなるな)
すると次第に音が聞こえてくる。
どうやら耳が壊れたわけではないらしい、と安心したのも束の間。彼の耳に聴き慣れない大きな言葉が聞こえてきた。
「よくぞ異世界から参ったァッ! 勇者よッ!」
(…………は?)
目を開いてみると、そこにいたのはRPGの世界でしかお目にかかった事がないぐらいの――――まさに絵に描いたような王様であった。
お初の人もこんにちわ、そうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
史上最弱、まさに自分一人では何もできない極地の勇者を誕生させてしまいました。
のんびりと更新していきますのでゆったりとくつろぎながら、お菓子でも片手に読んでいただければ幸いです。




