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君色レッスンズ  作者: 柏原ゆら
-another story-
8/13

#01

 数ヵ月後。数ヵ月前交際を始めた日高莉乃(ひだかりの)望月英太(もちづきえいた)は、無事高校生になれていた。

 莉乃は、第一志望としていた学校に見事合格し、その後を追ってきた望月も無事合格。二人は、同じ学校に入学することができたのだ。

 学校は同じになれたが、クラスまではそうはいかず。別になったしまったが、一組のカップルとして、登下校は共にしていた。


「――でさぁ、莉乃は?」


 突然の問いかけに、莉乃は「へっ?」と抜けた声を出す。そんな莉乃を見て苦笑しながらも、問いかけた彼女は再び訊ねた。


「だからぁ、莉乃は好きな人いる?」


 どうやら、話の内容は恋愛についてだったらしい。何て答えればいいかわからずあたふたしていると、彼女は話を進めた。


一華(いちか)はいないんだって。それに、初恋は小さい頃飼ってた犬らしいよ~」

「ゆう、それは冗談だって言ったでしょ」


 可笑しいよねぇ、と楽しそうに笑う涼宮(すずみや)ゆう。少々呆れ気味な本城(ほんじょう)一華。彼女達は、高校で一番にできた友達だった。出会って間もないが、彼女達といると心地がよく、中学時代に塾に通っていた頃とは大違いだった。


「そういうゆうはどうなのよ」

「私ぃ? そりゃいるよ、誰かさんと違って」


 悪かったわね、と一華がボソリと呟く。そんな一華を見て苦笑していると、「で、莉乃は?」とゆうが莉乃に話をふった。


「わ、私? まぁ……」

「やっぱりいるよね! 高校生だもんねー!」


 イェーイ! と両手を挙げるゆうに、莉乃は小さくハイタッチをする。一華に、なんかごめんと謝りながら。


「ところで、その人とはどんな感じ? 結構仲良しなの? 脈有りそう?」

「脈有りというか……」


 付き合っている、という肝心なところを言えずに言葉を濁す。ゆうは全く察してくれず、何々!? と詰め寄ってきた。すると、二人のやりとりを静かに見ていた一華が口を開いた。


「……付き合っているの?」


 そうなんです、と思いながら頬を赤く染める。そんな莉乃を見たゆうは、キャー! と黄色い声を発した。その声に、クラスメイト達は反応する。注目されているのがわかり、更に頬の赤さが増した。


「そうなんだ!! 莉乃はもう既にリア充なんだ!!」

「ゆうちゃん、声が大きい……」


 莉乃の注意を受けたゆうは、小さな声で何度も何度も、羨ましいなと口にした。うぅ、と莉乃は恥ずかしそうに顔を手で覆う。そんな姿を、一華は微笑ましそうに見ていた。


「で、誰なのその相手は?」

「ええと……」


 ここは、すんなり答えてしまっていいのだろうか。決して、ゆうと一華のことを信用していないという訳ではない。だから、莉乃は意を決して彼の名を口にした。


「隣のクラスの、望月英太君です……」


 と言っても、入学したての彼女達には、他クラスの人のことなんてわからないかもしれない。が、それは見当違いだった。


「あぁ! あの、ちょっとちっちゃめな人ね! 可愛いなって思ってたんだよね~」


 知ってる! と手を叩くゆうと、誰それ? と首をかしげる一華。どうやら、ゆうは既に知っていたようだ。


「でね、私の好きな人はね――」


 話を切り替え、ゆうの好きな人の発表とというところで、教室のドアが勢いよく開かれた。そこから、「席に着けー」と言いながら担任が入ってくる。そして、教卓での開口一番はこうだった。

 転校生が来るぞ。

 それを聞いた生徒達は、ザワザワし始める。莉乃も、どんな人だろうと想像し始めた。

 すると、一人の女子生徒が教室に入ってきた。スタイルの良い体型、細長い脚。茶色いヘアゴムで結われているポニーテールからは、スポーティーな雰囲気が漂ってくる。

 すると、隣に立っていた担任が、黒板に何やら書き始めた。そこには、『水無飛鳥(みずなしあすか)』の文字が。どうやら、彼女の名前らしい。

 何故、こんな変な時期に転校生なんて来るのだろうか、と思ったが、担任曰く、彼女はアメリカからの帰国子女で、予定では莉乃達と同じタイミングで入学するつもりだったが、諸事情により、数日遅れてしまった、ということらしい。

 彼女は、元気よく「よろしくお願いします!」と挨拶をした。

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