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君色レッスンズ  作者: 柏原ゆら
-main story-
7/13

#07

 その日は、少し早めに来てしまった。

 いつもより早いせいか、望月はまだ来ていなかった。また、心臓がドキドキし始めた。望月の事を考えるとこうなのだ。

 すると、望月が教室に入ってきた。


「あれ、日高さん、今日は早いね」

「あっ、うん。まあね」


 あはは、と苦笑いをする。望月は、今日はそのまま鞄を横に掛けて突っ伏した。今日は授業に出てくれないみたいだ。二日連続はつらいのだろう。

 莉乃には、この沈黙がつらかった。それに、何か望月と話したい。そう思った時には、既に声をかけていた。


「あのさ、望月君……」


 望月は、ん? とこちらに顔を向ける。胸が高鳴る音を聞きながら、問いかけた。


「望月君って、好きな人いるの……?」


 自分で訊いて、驚いた。何故そんな質問をするのか、わからなかった。取り消そうか。そこまで思った。

 だけど、なんだか気になる。言ってしまったからには答えを聞きたい。すると、望月は何の躊躇いも無く答えた。


「……いた、かな」


 望月は、そう言って遠くを見つめた。

 過去形の意味は何なのだろうか。付き合っていて、別れてしまったという事だろうか。それとも、相手にカレシができてしまったという事だろうか。

 不思議にえ思っているのを読み取ったのか、望月は口を開いた。


「実はその子、つい最近アメリカに行っちゃってさ。すごく仲が良くて、たぶん両想いだったかもしれない。だけど、伝えられずに彼女が行っちゃってね」


(……そういう事だったんだ)


 今は日本(ここ)にいない。だから、過去形なんだ。


「なんかごめん……」

「べつに大丈夫だよ。彼女だって向こうでカレシができているだろうし、もう僕の気持ちも晴れたしね」


 気持ちが晴れた、と聞いて、ホッとしてしまった自分がいた。わかっている。もう、誤魔化さない。これは――


(――好きっていう事なんだ)


 はっきり理解した。莉乃は、望月が好き。アメリカにいる彼女に負けないくらい、望月が好きなんだ。




 長かった授業が終わり、望月は相変わらず早々と教室を出ていった。その後を、莉乃は追いかける。何故追いかけているのかはわからない。でも、少しでも望月に近づきたくて。手を伸ばしたくて。気づいたら、声をかけていた。


「望月君っ!」


 望月は、ゆっくりと振り向いた。目を丸くして莉乃を見る。周りに人はいない。


「どうしたの?」


 優しい声に、再び胸が高鳴る。心臓の音が邪魔をして、上手く言葉を発する事ができない。それでも、望月は何も言わずに待ってくれた。


「……好きです」


 ようやく振り絞った言葉は、これだった。望月は、更に目を丸くする。


「私、望月君が好きです。誰よりも、好きですっ」


 恥ずかしくて倒れてしまいそうだ。でも、踏ん張って、望月の言葉を待った。


「……それで?」


 待ちに待った末、望月の口から出た言葉はそれだった。『それで?』とは、どういう事だろうか。他に言う事でもあるのだろうか。

 不意に、ある言葉が頭に浮かんだ。ハッとなり、その言葉を口にする。


「私と、付き合ってくださいっ」


 すると、望月はいつものように微笑んだ。


「よろこんで」




 私の日常は、君の色で染められていく。


これにて完結となります。読了ありがとうございました!

なんだかこれで終わる気がしない……そんな気がしませんか?(笑)

そうなんです。これで終わらせません。

今後のお話を、いつか書きたいと思っております。でも、今はもうひとつのほうを優先したいので、おそらく投稿は暇ができる三月頃かなぁと。この後に続けて書くかたちにします。一応、完結設定にします。

改めまして、読了ありがとうございました。感想、評価等よろしくお願い致します!

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