#06
今日は、いつもより少し遅れてしまった。
小走りで教室へ向かうと、まだ生徒達は席に着いていなかった。ホッと、胸を撫で下ろす。
席へ向かうと、珍しく望月が鞄から筆箱やテキストを出していた。もしかして、授業に出てくれるのだろうか。そう考えると、胸が高鳴った。
「望月君、今日は授業出るの?」
「うん。日高さんが誘ってくれたからね。それに、今日は睡魔は襲ってこないみたいだし」
そっか、と笑いかける。嬉しい。なんだか、いつも以上に心細さは感じなかった。
いざ授業が始まると、望月は真剣な面持ちになった。昨日は気にも留めていなかったが、望月は左利きらしい。つまり、莉乃が左側に座っている事によって、時々肘があたるのだ。
(……なんか、ドキドキする)
心臓の音がうるさい。少しずつ赤らめてくる頬を、自身の冷えきった手で覆い隠した。望月と関わる前までは、こんな事無かったのに。
そんな莉乃をよそに、突然先生がテストをやると言い出した。生徒達は各々ブーイングをする。莉乃は心拍数が加速していく中、テストを行った。
(きっと、ボロボロなんだろうな……)
テストはすぐ返ってきた。見ると、90点。なかなかで、悪くはなかった。ホッと、胸を撫で下ろす。
「望月君、何点だった?」
「僕は94点」
「えっ!」
まさかの、負けた。望月よりは頭は良いと思っていた。それも、この範囲は今日の授業のまとめだった。
「悔しい……。望月君、もうこれからずっと寝てていいよ」
「え、何で?」
だってテストで負けちゃうから、なんて言えない。それに、起きていてくれたほうが心細くない。結局は、起きていてほしいのだ。
「……嘘」
ボソッと呟くが、望月の耳には入っていないようだった。
皆様、明けましておめでとうございます!
2016年初更新となります。今年もよろしくお願い致します。