#05
すみません、忘れていました……。
40分ほどオーバーしてしまいました(汗)
翌日の朝は、望月と別で登校した。それはどちらから言った訳ではなく、自然と別になった。
昨日は、変なことを言ってしまった。きっと、望月は呆れて何も言わなかったのだろう。……そう、丸く収めたかった。だけれど、やはり心のどこかで悪く思う自分がいる。望月は、図星だったから言い返さなかったんだと。
頭がごちゃごちゃになり、はぁとため息をつく。すると、目の前に座っていたゆうがそれに反応した。
「莉乃っ、またため息ついてるよ。どうかした?」
また? と首をかしげる。すると、ゆうだけでなく一華までもが頷いた。それだけため息をついても、無理がないと思う。莉乃は、今思っていることをありのまま話した。どう思う? と訊いてみる。
「そんなの、望月君じゃないからわかんないよ!」
ゆうの第一声はこれだった。何も言えずに固まっていると、一華が補足してくれた。
「だから、真相は望月君にしかわからないってこと。つまり、どんなに悩んだって無駄。望月君に本当のことを訊くのが一番だよ」
「そういうこと! まぁ、ゆうが思うに、望月君が水無さんのことを好きになっちゃったってことはないと思うけどね~。望月君の性格からすると、結構ズバって言いそうだし」
悩んだって無駄。その言葉が、莉乃の心に響いた。確かにそうだ。独りでモヤモヤ悩んでたって、何もわかりゃしない。訊いてみるのが一番なんだ。
この時、二人に相談して本当によかったと思った。二人に「ありがとうっ」と告げ、莉乃はポケットからスマートフォンを取り出した。そして、『今日一緒に帰ろう?』というメッセージを望月に送った。
放課後。望月からの『もちろん』という返事を受け、急いで支度を済ませる。
そんな時――
「日高さん!」
突然、飛鳥に声をかけられた。早く帰りたいんだけどな、と思いながら飛鳥に身体を向ける。すると飛鳥は、いきなり顔の前で合掌した。
「昨日はごめんね! 二人の空間に、勝手に割り込んじゃって」
その事か、と思いながら大丈夫と返す。飛鳥はそれ以上何も言いそうになかったので、莉乃は気になっていたことをズバリ訊くことにした。
「水無さんは、望月君のこと好きなの……?」
突然の質問に驚いたのだろう。飛鳥は目を丸くした。が、すぐその目は穏やかなものに変わった。
「好きだった、かな」
「『だった』……?」
「うん、中学生の時はね。私達は二年生の時に初めて同じクラスになったんだけど、初めて話したのは秋ぐらいだったかな。喋ってるとすごく楽しくて。好きになってた。けど、私がアメリカに行くことになって。当時は期間がわからなかった。数ヶ月で帰ってこれるかもしれないし、何十年も向こうにいるかもしれない。もしかしたら、一生帰ってこないかもしれない。それなのに、気持ちを伝えるのは身勝手なことだと思った。だから伝えなかったの」
望月がわかっていたように、飛鳥も、自分達は両想いだと気づいていた。なのに、伝えなかったんだ。
「そしたら、予想外なことに数ヶ月で帰ってこれて。偶然、この学校で英太に会えた。最初はとっても嬉しかったけど、英太にカノジョができたって聞いて、私の気持ちは流れ出ていった。あ、そうなんだって、ショックも受けなかった。たぶんそれは、数ヶ月の間で、私の英太に対する気持ちがかなり薄れていたっていうことなんだろうなぁ。きっと、英太もそう。だって――」
飛鳥の目が莉乃の目を捉える。飛鳥は微笑んだ。
「――だって、めちゃくちゃ大好きなカノジョができたからねっ」
「……へっ!?」
「だってさぁ、英太すごく楽しそうに話すんだもん、日高さんのこと!」
そうなのだろうか。急に顔が熱くなってくる。掌の温度で頬を冷やす。
「でも、日高さんの大切なカレシに抱きついちゃったりして、本当にごめんねー。心は大丈夫なんだけどさ、体は反応しちゃうみたいで~」
あはは、と飛鳥は苦笑する。ということは、中学生の頃、飛鳥が望月に抱きつくのは普通だったということだろうか。
(……本当、悪い人じゃないんだけどなぁ)
莉乃は、小声で飛鳥に「ありがとう」とお礼を言った。