#04
「――さん? 日高さん? 大丈夫?」
望月の声で、ハッと我に返る。望月が「大丈夫?」と顔を覗かせていた。
「日高さん、なんかボーッとしてたよ」
「あ、うん。ごめん……」
どうやら、また考え事をしていたらしい。昼間に、ゆうと一華にも指摘された。
「具合でも悪いの?」
「ううん、違うの。大丈夫だよ」
眉をハの字にしかめる。すると、望月はよかった、と微笑んだ。
その後、沈黙のまま足を進める。ふと、莉乃は望月に問いかけた。
「望月君って水無さんのこと、まだ好き?」
望月から、え? と少々驚いたような声があがる。自分だって驚いた。何を訊いているんだろう。撤回しようかと考えたが、それよりも早く、望月の口が動いた。
「何で?」
質問を、質問で返されてしまった。それが、心に刺さった。いつもの軽い感じで、「好きじゃないよ」と言ってほしかったのに。即答しなかったところから、まだ好きなんじゃないかという予想が広がっていく。
「だ、だって、前好きだった人と突然再会したんだよ? それに、水無さんはまだ望月君のことが好きみたいだし。私だって、望月君のことが誰よりも好きって言ったけど、周りから見ても、望月君には私より水無さんのほうが合ってると思うし……」
結局、自分は何が言いたいのだろう。よくわからないが、きっと不安なんだ。
「私、邪魔じゃない……?」
不安なんだ。飛鳥は、自分より積極的で、そんな飛鳥にいつしか望月をとられてしまうと思っている。望月に手を伸ばしても、するりと抜けていってしまいそうで怖いんだ。
望月は何も言わない。何故だろう。図星で、言葉が出ないということだろうか……?
そんな暗い雰囲気の中、明るい声が飛んできた。
「えっいたーーー!」
刹那、ドサッという重たい音がなる。目の前には、望月に背中からのしかかる飛鳥がいた。
「……飛鳥、重い」
「英太~、一緒に帰っていい?」
鼻の先がくっつきそうな距離で、飛鳥は望月に問う。望月は数秒考えた末、いいよと微笑んだ。
(え……?)
望月の返答に、莉乃は目を丸くする。折角の二人での下校だったのに、望月は何故快く了承したのだろう。莉乃は、たとえ空気が悪くたって、二人で帰りたかったのに。
――やはり、望月は気移りしてしまったんだ。莉乃より長く想ってきた飛鳥に気持ちが移ってしまったんだ。
(――『好き』って、一度も言われなかったな)




