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君色レッスンズ  作者: 柏原ゆら
-main story-
1/13

#01

こんばんは、柏原ゆらです。

六作目の投稿となります。皆様に楽しんでもらえると嬉しく思います。

それでは、どうぞよろしくお願い致します!


 いるよね、私みたいにすぐ周りに合わせる人。

 いるよね、私みたいに嫌われるのが嫌だから本音が言えない人。

 いるよね、私みたいに誰かの存在で、誰かの一言で人生が変わる人。


 ***


「えー、それでは授業を始めます。今日は、テキスト三十五ページの――……」


 その声と共に、ページを捲る音が響く。皆、数学の授業は退屈だと言うけれど、今の彼女には、ここにいる人間にはそう思えない。何故なら、五ヶ月後に高校入試が待っているからだ。

 雪ノ葉(ゆきのは)塾に通い始めて一年の日高莉乃(ひだかりの)は、どこにでもいるような中学三年生。人に嫌われるのが嫌、だから本音が言えず周りに合わせるばかり。そんな、ありふれた性格の持ち主の一人だ。この塾に通い始めてからも、変わった事は特にない。ひとつ言うならば、今日、右隣の席に新しく入塾した生徒がいるくらいだ。毎日行う出席確認の時名前を聞いたところによると、彼の名前は望月英太(もちづきえいた)。隣の中学に通う男子生徒だ。特徴は、今でもそうのように、授業中寝る事。これじゃ、塾に来ている意味がない。授業開始五分前に教室に入り、それからすぐ睡眠。たぶん、授業終了まで寝るつもりなのだろう。休み時間も、特に友達なんかと話す気配なし。なんて、莉乃も彼と同じなのだが。

 莉乃が入塾したのはちょうど一年前。夏休みに友達と遊びすぎ、宿題が終わらず成績も伸びなかった事が理由で入塾した。この辺りに塾はたくさんあるが、莉乃が雪ノ葉塾を選んだ理由はひとつ。

 ――知り合いが少ない所。

 普通、女子なら友達や知り合いが多い所に入りたがるだろう。だけど、莉乃は違う。猫被りな莉乃は、学校で本音を言えないため、毎日が疲れ、つまらなかった。そんな莉乃の癒し(?)の場として、雪ノ葉塾はあるのだ。だが、少ないからといってゼロではない。少々、苦手な部類の人間がこの塾に通っているのだ。


「日高」


 突然、頭上から先生の声が降ってきた。顔を上げる。


「日高、ひとつ上のクラスに行く気はないか?」

「……ひとつ上ですか?」

「あぁ。日高には、このクラスは簡単だろう。入試の為にも、どうだ?」


 雪ノ葉塾は、学力によって五つのクラスに分けられる。莉乃は上から三番目、ちょうど真ん中のクラスだ。確かに、このクラスのレベルは少々簡単だと感じていた。入試の為にも、できるなら行きたい。だけど、莉乃の心は行かない方に傾いた。何故なら、ひとつ上のクラスには、苦手なあの人がいる。同じ学校で、一年生の頃クラスが一緒で意外と仲が良かったが、当時からどこか苦手だった。今では学校のクラスは離れているし、塾もクラスが違うので会うことも少なかった。莉乃にとって、それがとても過ごしやすい環境だった。だが、ひとつ上のクラスに行くとそんな環境が崩れる。そんな事で、と思う人がいるかもしれないが、莉乃にとっては、とても嫌な事だった。


「……いや、大丈夫です」

「おう、そうか? なら、また気が向いたらいつでも言ってくれな」


 わかりました、と返事をし莉乃は次の授業の準備をした。隣の席の彼は、相変わらず寝ていた。

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