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お祭り 前編

またまた前編では食事風景は出てきません…少しお待ち下さい。

「なぁブランさん知ってるか? 今度東方の国で盛大な祭りがあるんだけどな」


 最近あまり傭兵の仕事が無いのか、昼間から呑みに来ていたグレンさんが嫌ーな雰囲気の話をスタートさせた。


「噂には聞いてるよー。何だっけ? 東方の国全体でやるおっきいやつなんだっけ?」


 詳細は忘れちゃったけど元々は皇帝の生誕祭か何か堅苦しいものだったらしいけど、今は年に一度行われるただの大きなお祭りになってるんだっけかな。

 毎年この時期に常連達からお祭りの勢いで買ってしまった置物とかのお土産をいっぱい貰うんだよね……。


「知ってるなら話が早いな! じゃあ俺と一緒に屋台出そうぜ!」

「ちょっと何言ってるか分からないんだけどグレンさん?」


 なんか鼻息荒くカウンターに乗り上げながら勢い良く宣言してるけどちょっと待って?

 その『勿論良いよな?』って顔もちょっと待って?

 うん、待って?


「考えても見ろよブランさん、東方一のお祭りだぜ? もう東方の参加者から観光客までおっそろしい程財布が……いやっ客が居るんだぜ!? そこでブランさんの珍しい料理出してみろよ、わんさか人が集まってくるぜー?」


 こぶしを握り締めもはや僕に言ってるのか分からない程あさっての方向を見ながら語るグレンさんだけど、とりあえずカウンターから足下ろそうか、うん、雷落とすよ? 物理的な雷。

 と言うかわんさか人が来てもなー、そんなにお金に困ってない……と言うか材料なんて自分で採って来てるからタダだしなぁ……。

 ん? お金? 材料? 


「屋台料理なんて僕あまり詳しくないんだよね……リラに相談してみないと分からないって言うか、グレンさん、本当の事言ったら考えてあげるよ?」

「金が無い。俺が」


 だよね。

 分かってたよ、うん。

 だって最近は一番安いお酒と、少量で肴になるビーフジャーキーしか注文しないもんね。


 さて、どうしたものか……。

 実際屋台料理なんて知らないし、聞いて作ってもそんなすぐに形になるか分からないし、それ以前にお店もあるし。

 腕を組み必死に考えを巡らせていると、『よし!』と元気な声を上げグレンが立ち上がる。


「じゃあブランさん! 場所とか屋台の組み立てとかは俺に任せろっ! なっ! だから料理よろしくなー!」

「ちょっ、グレンさっ……」


 ばたーーん!


 ……行っちゃった。

 人の話最後まで聞かず飛び出して行っちゃった。

 あれで打ち合わせ済んだつもりなのかな? 何を出すとかさ、コンセプト的な物とか……。

 

 グレンさんが飛び出していった扉に手を伸ばしながら呆然としていると、心底哀れむような声でディルさんが口を開く。


「あの馬鹿……今度会ったら根性叩きなおしてやらんと。ブランさん大丈夫かよ? そう言えば今日はリラちゃん来てないんだな」


 リラちゃん!?

 リラをそんな呼び方してる人初めて会ったよ。あぁだからリラ、ディルさんの事好きなんだなー。


「うーん、どうなるかまだ分からないかも……。リラは確か今日『ノアと嬉し恥ずかし二人旅ー☆』って言ってたね」

「は? あいつらいつも一緒じゃねぇか。しかも嬉しいのは分かるけどよ、何が恥ずかしいんだ?」


 僕に聞かないで。お願い。


 リラの居る所は大体分かるけど、あんなに喜んで旅行に行ったんだから押し掛けたら海が大荒れするよね。

 えー、でもどうしようー。


 ばたーーん!


「こっんにっちわー!! 世界樹探索からミリアが戻って来ましたーよっ!」

「んでお前そんなに元気なんだよ? あーただいまブラン、つっかれたわー」

「おかえ……あっ」



 ☆



「あー成程な……そう言う訳か。いやーでもさすがにびびったわ、帰ってくるなりブランが肉食獣の目で飛びついてくるんだぜ? 俺終わったって思った……」

「えへへ、ごめんごめん。つい嬉しくてさ」


 丁度グレンと入れ違うように世界樹探索から帰ってきたミリアさんとクロウを捕獲し事情を説明すると、やっぱり話が早いね、二人ともすぐ協力態勢になってくれた。

 と言っても異世界のお祭り料理を知ってるのはクロウだけなんだけど、ミリアさんも出来る範囲で手伝ってくれるらしい。

 もう、ミリアさんすっごく良い人。

 世界樹探索手伝ってあげようかな? この際、禁域にでも連れて行ってもいい気がするよ。うん。


「で、ブランどうすんだ? どんなの出そうって考えてる?」

「んー……異世界料理でもこっちのお祭りの屋台と同じような物を出したら、きっとグレンさんも喜ばないと思うんだけど、僕東方のお祭り行った事無いから何があるか分からないし……どんな感じなの? ミリアさん」


 もりもりとお茶漬けとお漬物を頬張るミリアさんに視線を向けると、完全に硬直しながら遠くの方を見つめだしてしまった。

 しばらくその様子を眺めつつ待っていると、ゆっくりと再起動したミリアさんが引きつった笑顔と共に口を開いた。


「えーっと……あんまりお祭り経験って無いんだけど、確かお酒と腸詰とか肉の塊を焼いたやつとかが売られてた気がする……あと売り子さんが籠に小さいお菓子を入れて売り歩いてたような……?」

「肉と酒と菓子だけ……?」

「あとはパンとかもあった気がする?」

「……」


 肉と酒とパンとお菓子……。

 もう異世界料理に拘らず、パンに肉と野菜挟んだだけでもいい気がして来た。

 あぁほら、クロウも同じ思いなのか表情が固まったまま動かなくなっちゃったよ。


「じゃあ……そんなに凝った物作らなくても良さそうだな、ブラン」

「うん……そうだね」


 一気にクロウのやる気がそがれちゃったみたいだけどまぁ一手間加えれば良いかな。

 じゃあちょっと食料庫の確認を……。


「えー! きっと凝った異世界料理だったらお祭りも賑わうしユリカちゃんも喜ぶと思うのに……」

「え? ユリカ喜ぶかな?」

「おっおいブラン……」

「それに私もお祭りにみんなと参加できるの楽しみだったのになぁ……」

「……っ」


 ミリアさんの最後の一言でクロウのやる気が再熱したようだね。

 それにしても尻に敷かれるって訳じゃないけど、クロウはミリアさんに弱いなー。


「よっしブラン。この際だから異世界の祭り料理の代表的なのを何個か作るぞ!」

「おっ!? 楽しそうになって来たなっ! 俺も何かさせてくれよブランさん!」


 えっ? ディルさんまで? 

 ディルさんはすっかり乗り気で、クロウと二人どんな物が話題になるかで盛り上がり始めてしまった。

 さてはディルさん、リク君に良いところ見せたいんじゃ……。

 まぁでもみんな助けてくれて良かったー! 後は僕が頑張って食材持って来れば良いんだもんね。


「じゃあクロウ、思いつくの一通り言ってみてよ。ここにある物で出来れば良いけど、無ければ揃えるから」

「おっしゃ! じゃあ……」


 クロウが次々に羅列していく料理名と必要食材をメモし、早速不足食材の調達に向かった。




「うわぁぁぁたかいぃぃぃこわぃぃぃうははははは!」

「ミリアさん暴れないでよぉ、落としちゃうから」


 やる気満々のクロウとディルさんに、お店にある食材で出来るメニューの思索をしてもらってる間に足りなかった物をミリアさんと取りに来てます。

 勿論飛んで。

 さすがにミリアさんがいるから竜の姿にはならなかったよ? 翼だけ出してゆーーっくり飛んでるんだけど……さっきから怖いのか楽しいのか分からない反応なんだよね。


 どうしても調達に付いて来たがったミリアさんを材料調達用の特大の籠に入れ、まずは世界樹の枝先に少しだけ生る実を採りに巣の近くまで舞い上がる。

 巣より上にいっぱいあるんだけど、多分ここで酸素が限界になっちゃうと思うんだよね。


「ミリアさん、落っこちないように何個か実を採ってもらって良い?」

「はーーい! ねぇねぇブランさんっ! これ終わったらちょっと世界樹の周り飛んで貰っても良い!?」

「ふふっ何となくそう言われるの分かってた」


 行く先を告げたらすっごい乗り気で付いてきたからきっとそうだとは思ったんだよね。

 ミリアさんは落ちないように慎重に作業を進めながらも、考古学者だからかテキパキと作業を進めていき、思っていたよりも早くミリアさんの足元は、両手に納まる位の赤い世界樹の実でいっぱいになった。


 本番にはどれだけいるんだろう? これ以外の実でも作る予定だから世界樹の実はこれだけでいい……と思う。多分。


「ねーブランさん、一個食べてもいいー?」


 籠の中を覗き込みながら考え込んでいると、ミリアさんが実に噛り付きながら無邪気な顔で見上げてきた。


「あはははっ、もう食べてるくせにっあははは」


 あまりにも悩みなど無さそうな顔に思わず籠から手を放して笑い転げちゃいそうだったよ。危ない危ない……。

 あー面白いね、クロウが夢中になっちゃうのも納得だよ。


 じゃあこの実はこれ位にして、次は世界樹の麓の森に行って……っと。

 でも次の実は人間の街にも売ってるんだよなぁ。別に買いに行っても良いけど……。


「ブランさん次どこ行くの!? もっと上!? 反対側!? あーもう早く行こうよ!!」


 ……うん、やっぱり世界樹の周りぐるぐる飛びながら麓で採取しようかな。





「おーおかえり、随分遅かったんだな」


 結局あの後世界樹の周りをぐるぐるぐるぐる周って、ついでにミリアさんが気になった場所もぐるぐるぐるぐると周って、さすがに疲れてきたなってころにようやくお店に戻って来れた。

 すっかり日も落ちて馴染みのお客さんがチラホラ訪れる頃、ようやくお店に戻ってきたのだけれど、クロウもディルさんもまだ楽しそうに試作品を作ってくれていた。


「たっだいまー! いっぱーーい採ってきたよー!」

「だから何でお前はそんな元気……おいブラン、お前がバテてる所はじめて見たぞ……」

「そう……?」


 まだ星の日じゃないけどぐっすり寝たい位疲れたかも。


 大量に採って来た実をクロウの前にどさりと置き確認してもらう。

 クロウは一個一個丁寧に確認していき、満足そうに頷いた。


「いいのばっかり採れたんだな。これなら本番でも問題ないんじゃないか? こっちも大体何が良いか決まったし、後は細部を詰めて行くだけだ」


 カウンターの上に大量の試作品を並べ満足そうなクロウとディルさん。


「折角だからごちゃごちゃ色んな料理出そうぜ!」


 にやりと笑うクロウとディルさん……なになに? 嫌な予感しかしないんだけど……。

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