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テクニカルアーツ  作者: 乾紅太郎
第一章 黒き龍と新緑の少女
2/16

風の丘の家

 アルスペリア北西に位置する古都、イレイフ。初代大統領の生まれ故郷でもあるこの街には数多くの歴史的建築物が立ち並び、今もなおこの国を見守り続けている。


「やっぱ落ち着くよな、ここは」

 

 その中心地であるイレイフ中央駅の前のパーキングに車を止め、アレッドが周囲を見回しながら外の空気にその身を預ける。春の終わりを告げる生暖かい風が吹き、エヴァルの銀の毛を撫でていく。


「銀行行くか、財布の中身が心もとないし」

 

 ラッシュも終わり、静けさを取り戻そうとしている駅の前にあるのはアルシェ銀行イレイフ支店。

 首都アルシェに本店を構えるこの国において最大の銀行だが、その特徴は誰もが一度は足を止めるその象徴にある。


「しっかし、いつ見ても物々しいな……」

 

 アレッドとエヴァルが見上げる先にあるのは黒竜がモチーフとなった石像が一体。

 アルシェ銀行の創始者が出会ったというアーツを元にしているそうだが、今もなお彼以外においてそれを見た者はいないという伝説のアーツ。


「バルデルね、一度くらいはお目にかかりたいもんだな」

 

 彼を含む組織の者すら未だ発見できてはおらず、今やすっかりお伽噺の住民と化した感のある竜の下を通り抜ければ清潔感のある部屋が彼を出向かえる。

 スーツ姿の男性から子供連れの女性まで、年齢層豊かな人達を横目にアレッドがエヴァルを抱きかかえて発券機から用紙を取れば6番目との印字。


「さあてと、あいつらに何を買って行ってやろうかな」

 

 10分くらいで用は済むだろう、と思い手に取ったのは芸能雑誌。

 アイドルグループ、トラベリングの今だのセルミック財閥のインタビューなどが載ったページを流し読みしながらアレッドがそろそろかと顔を上げたその時だった。


「強盗だ!」

「……礼儀いいな」


 わざわざ自分達の立場を名乗りながら現れたのはこれまた礼儀のいい黒づくめの服装の男らしき人物が四名。

 怪しいぞと言わんばかりのその立ち振る舞いに笑いをこらえつつ、アレッドは仕方がないなとばかりに雑誌を閉じた。


「……人は専門外なんだけどな、物騒なの持ってるし」


 そうぼやきながらも店の奥へと誘導されていく人々の波をかきわけて、前に立ったのはアレッドではなく。


「どいて下さい!」

「え?」


「お嬢ちゃん危ないって! あんたも!」


 アレッドと彼らの間のその中間、声からして少女と呼ぶべき子供だが、白のローブで覆われたその中など伺いようがない。

 垣間見える赤毛こそ見えるが、それ以外は全てが不明だ。


「け、警察を――」


 銀行員の声は銃声によってかき消され、天井の照明が割れる音と悲鳴によって行内が騒然とする中、少女はなおもそこから動こうとはせず。


「止めなさい! 神は貴方達の様な者を決して許しはしません!」

「ああ!? 何を言ってんだお前は!?」

「……なるほどね、スパイラルか。身体を隠してるってことはまだ日が浅いな」


 少女に照準を向ける彼らを見てなお、アレッドは自分の出番がないことを悟っていた。

 どちらもあまり相手をしたくない彼にとって、不幸中の幸いだ。


「この騒ぎであれば外の者が警察に通報するでしょう、それまでに許しを請えば罪は許されるものとなります。でなければ……」

「でなければなんだよ!?」

「神によって裁かれるだけです」


 幼さの中にある種の信念を持った声が響く。アレッドと彼女以外、誰もその意味を理解することなく。

 リーダーの一人が他の三人に目配せをし、頷いた彼らが彼女を拘束しようと腕を伸ばした瞬間。


「許しを請うことはないのですね?」

「悪いなお嬢ちゃん、俺達は捕まらない。何たって――」


 その実、アルスぺリア国内において犯罪率は他国と比べて極めて低い。

 にも関わらずこうして犯罪が発生したのは、何もアレッドの運が悪いからでも彼らに特別な策があったからでもない。

 全ては神のお導きだ。


「跪きなさい!」


 少女が手に掲げたのは赤い石がはめ込まれたペンダント、アレッドの読み通りの展開だ。


「それが……どう……」

「おい! お前何を……」

「神の裁きです」


 膝から崩れ落ちる様に倒れこんでいく男達を見て、行内に歓声が沸き起こる。

その声に応えるように少女が一礼した後、アレッドと向かい合った。


「お怪我がなくて何よりです」

「スパイラルアーツか?」

「ええ、見ての通りまだまだ修行の身でございます。貴方もまた選ばれし方なのですね?」


 アレッドに抱きかかえられているエヴァルを目にしたからか、その声に親密さが混じる。

 が、ここで仲良くお喋りする気など彼にはなかった。


「その言い方は好きじゃないし、このやり方もあまり好きじゃないな」

「ですが、いずれは裁きを受ける運命。であれば、こうするのが最善なのです。それでは失礼致します」


 警察が到着し、彼らを見て足を止める。既に意識を失った彼らを見て状況を理解したのか、一人の刑事が片手を挙げながら歩み寄ってくる。


「よう、どっちだ?」

「こっちです」

「なるほど、お嬢ちゃんか。署まで同行願えるか? 色々と手続きが面倒でな」


 40代程度か、無精髭の生えた男性が気だるそうな声の男性が彼らの顔のマスクを剥ぎながら一人一人の顔を確認していく。

 そのどれもが覇気のない若い男性であり、アレッドと刑事はその想像通りの容姿に軽く息を吐いた。


「もちろん、喜んで」

「喜んで、か。神様ってのは大忙しだな」

「それが神が我々に与えたもうた我々の役目ですから」

「そうかい、先に行っててもらえるか。もちろん丁重にこちらもお迎えさせて頂く」


 アレッドが外に目を転じれば、パトカーが数台と野次馬が数十名。事件が珍しいのか、あちらはあちらで大興奮だ。


「全く、平和ってのは人をここまで馬鹿にするのかね」

「その平和を担ってる人が何を言ってるんですか」

「人間なんてのは馬鹿なくらいが丁度いいってことだよ、アレッド」


 刑事の軽口にアレッドが苦笑をもって答える、この刑事も相変わらずだ。


「アーツスパイラルか、あれも取り締まりようがねえからなあ」

「まあ役に立ってはいるんでしょう、本当にどうしようもないのにしかやらないみたいですし」

「実際に感謝もされてるんだろうが、割られた照明達の泣き声が聞こえてきそうだな」

「何を言ってるんですか、俺はもういいですか?」


 意識を取り戻したのか、不思議そうにアレッド達に視線を向けつつ自身につけられた手錠をぼんやりと眺めている。

 現実感がないのか、あれだけの事をしたにしてはやけに物静かだ。


「用もねえよ。ああそうだ、行くんだろ?」

「そのつもりですけど」

「そうかい、まあゆっくりしてけ。今日は俺もこれで仕事終わりだろうからな」


 初めに挨拶してきた時と同じように、気だるそうに片手を挙げてその場を後にする彼を見送って、アレッドはカウンターで先の札を掲げた。


「すみません、順番はまだでしょうか?」


「えーっと」


 それから20分後。無事に財布を膨らませる事に成功していたアレッドは、エヴァルと共にケーキ屋のガラスをじーっと眺めていた。

 アレッドの首が右から左へ流れると同時に、足元のエヴァルの首も同じように動いていく。


「エヴァル、どれがいい?」


 そう問いかけても相棒の顔はちょこん、と右に傾くだけ。人間の食べ物とは全く違う味覚を持つからか、こういった物への興味は極めて薄い。


「ショートケーキでいいか」


 5分ほど考えた後、考えるのが面倒くさくなったのか無難なものをチョイスしてアレッドが財布を取り出す。

 2ホールともなれば、流石に金額を聞いてアレッドの顔も曇る。


「う……仕方ない仕方ない」


 店を出れば太陽の光も地に届く様になり、彼らも柔らかな温かさに包まれる。


「さあて、もう少しだな」


 先の駅から20分ほど北西へ車で移動し、ここから更に15分程度。

 町の端に当たるこの場所を抜ければ、小麦畑が広がる穏やかな光景が窓の外に広がっていく。


「……懐かしいな」


 思わず彼の口から洩れる声は優しいもの。隣ではエヴァルの尾が揺れるスピードが速くなっていき、彼が笑みを漏らす中、再び携帯が鳴動する。


「電話か……はいアレッド」

「アイファ、何も意地悪で鳴らしてるんじゃないのよ?」

「知ってます、情報が入ったんですね」


 この情報とはもちろん、先の強盗騒ぎの事。警察の到着が速かったのも、事件が派手だった事だけが理由ではない。


「ええ、能力の行使はなかったようだし……それに彼らの仕業であればこれ以上は介入するつもりもないのだけれど」

「俺だって首突っ込む気ないですよ、現れてくれてほっとしたくらいです」

「そう、それならいいの。じゃあまたね、忘れないように」


 それを最後にぷつんと通話は切られ、アレッドはやれやれと肩を竦めた。


「忘れたら半殺しだろうな」


 イレイフから北西へ走ること35分、今まで畑や野原ばかりだった景色に変化が訪れる。


「見えてきた」


 アレッドがアクセルを緩め、見えてきた家々を見て目を細める。ファッフル、人口700人程度の静かな村であり、彼の育った地。

 近代的な建物は鳴りを潜め、鋭角な屋根とオレンジの壁からなる伝統的な街並みを不似合いな車が走っていく。目指すはその街そのものではなく、街を抜けた先だ。


「やっとだなエヴァル」

 街を抜けてすぐ、小さな門の前でアレッドが車を止め窓から手を伸ばして呼び鈴を鳴らす。


「はい」

「アレッドです」

「時間通りだな」


 初老の男性の声が聞こえ、門が自動的に開く。車では通れないためここからは徒歩となる。

 小高い丘の上にある緑の屋根と白い壁の家は、誰が呼び始めたか風の丘の家と呼ばれ始め、彼を含め様々な成長を見守ってきた。


「変わんないな、ここは」


 ファッフルの街並みが一望できる家の前、その玄関に立つ人物を見つけアレッドが足を止めた。


「おお、4か月ぶりか?」


 家に合わせよう。という先代の一言により、この家に住む大人は皆が緑と白の衣服を着用する。

 彼もまたその例に漏れず、緑のシャツに白のズボンという出で立ちでアレッドを出迎えた。


「どうも、元気そうで何より」

「お前に気遣われるような年じゃない」

「変わんないな、本当」

「お前、どうせ坂の途中でも同じことを思っただろう?」


 風の丘の家、その内部は壁を極力なくした開放的な空間が広がっている。


子供たちは皆、ここで共に育ち共に生きる。かつてアレッドがそうであったように。


「皆は散歩中ですか?」

「ああ、シイルが連れて行ってくれている。いつもいつも助かってるよ、どこかの誰かはあんまり帰ってこないからな」

「俺は顔出してますよ」


 大きな出窓の前に腰を預け、アレッドが中を見渡す。数か月ぶりに来る室内は前と何も変わらない。


「お前じゃない、もう一人だ」

「あいつは……忙しいんですよ」

「本当に忙しいだけならいいんだけどな、お前と同じであいつは頑固だ」

「頑固なのはシイルも一緒ですよ」

「そうだな、本当によく似てる。どれ、茶でも出そう。待てエヴァル、お前にも用意してやるから」


 キッチンから紅茶の香りが漂よいエヴァルがアーツ用のミルクに舌鼓を打ち始めた頃、にわかに外が騒がしくなる。


「おう、思ったより早かったな」

「俺が来ることは?」

「知ってるから早いんだろう、エヴァル行って来い」


 その言葉より速く、エヴァルが扉を押し開けて外へ駆け出していく。子供たちの歓声がその直後から上がり、窓の先では十数人の子供達がエヴァルと共に駆け回り始めた。


「大人気だなあいつ」

「アーツなんぞここに住んでたらまずお目に掛からないからな」

「ただいま戻りました、異常ありません」


 穏やかな時間が流れる中、アレッドとそう年の変わらない女性がそう言って敬礼の真似事をしてみせる。

 淡い緑のワンピースがよく映える、長い茶髪の穏やかな女の子。この家と最も深い繋がりを持つ、現在の主とも言うべき人物。


「お帰りシイル、お茶が入ってるよ」

「ありがとうございます、私が入れますからジェスさんは休んでて下さい」

「今まで休んでたようなものだ。子供達は私が見ているから、客人のおもてなしはシイルに任せよう」

「久しぶり、お仕事は順調?」


 ジェス、と呼ばれた男性が玄関の扉を閉じるのと同時にシイルが口を開く。手には既にカップが二つ持たれ、その視線は手近にある机へと向けられる。


「一応は、サンキュ……落ち着くな、何も変わらない」

「この椅子も随分と古いよね」

「買えとか言うなよ」

「言わないよ、アレッドもジュリウスも別にいいって言ってるのに振り込んでくるし」


 砂糖を一匙入れ、シイルが顎に手を置いてじっとアレッドを見つめる。

その顔は笑っているようでもあり、責めているようでもあり、アレッドはその視線から逃れるように紅茶を流し込んだ。


「好きでやってる、あいつだってそうだろ。あんまり来れないし」

「でもね、アレッドのお金はアレッドのだよ」

「だから好きに使ってる、この話は終わり。そんな話するならもう来ないぞ」

「来る癖に」

「……元気か?」


 図星を突かれたアレッドが話題を変えようと話題を振って、すぐに後悔した。

 この場に限っては気軽に出せる話題ではなかったが、シイルはそれを微塵も表に出すことなく笑顔を作った。


「元気だよ。ジェスさんもいるし、皆がいるし。楽しいよ……そんな顔しない。私は本当に楽しいから」

「ケーキ買ってきたから、後で皆で」

「忙しいの?」

「そうでもないけど……私も行っていい?」


 ケーキを冷蔵庫に入れながらシイルが発した言葉に、立ち上がりかけていたアレッドの動きが止まる。


「いいのか?」

「うん、アレッドと一緒ならいいかなって」

「無理そうだったら言えよ」

「アレッドが言うの?」


 一つ息を吐いて、アレッドは扉のノブに手をかけた。


「俺だから言うんだよ」


 玄関から裏に回り、坂を下ること数分。海を一望できる開けた場所に、彼の目的とする物がある。


「来たよ、お父さん。親不孝な娘でごめんね」

「そんなこと思ってねえし、思う資格もねえよ」


 緑の花が生い茂る花畑の中に、長方形の石がぽつんと置かれている。

 名前も生きた年月もその一切の情報も刻まれてはいない石にあるのは、誰かが置いて行ったであろう黄色の花が一輪だけ。


「まだ来てくれる人もいるんだな」

「街の人には好かれてたから」

「そっか、よかった」


 風がそよぐその中で、アレッドが静かに目を閉じた。


「祈ってくれるの?」

「さあな」

「私は……まだできないかな」

「言ったろ? 無理しなくていい」

「ジュリウスだったらどうするのかな?」

「あいつはあいつ、シイルはシイルだ」


 アレッドの脳裏に浮かぶ彼は、3年前のまま変わらない。

 最初に会ったのも最後に会ったのもこの場所で、そのせいかアレッドが思い出す彼はいつもここにいた。


「最近、会った?」

「いや、そっちは?」

「一年前に、少し」

「そっか、ならいい。元気そうだったか?」

「いつも通りだった、本当にいつも通り」


 無愛想に言葉をぽんぽんと返す彼を思い起こすのは簡単で、彼の表情も思わず綻ぶ。


「近い内に3人でまた来よう」

「来るかな?」

「来るさ、3年ってのは早いけど長いんだから」


 アレッドが心の中で永い眠りについた彼に別れを告げ、背を向けたところで携帯が鳴った。休みにも関わらず大盛況だ。


「ルーア? 仕事中じゃないのか?」

「最悪」

「何かあったのか?」


 表情の変化に気付いたのか、心配そうに覗き込んでくるシイルに笑みを向けてアレッドが歩を早める。

 ただの諜報にしては珍しく、ルーアの口調がやけに重い。


「今ケルトにいるんだけど」

「ケルトだったのか、それで?」

「外れだった」

「外れ?」

「そう、予定されてた場所に誰もいなかったの」

「それの何が問題なんだよ、察知されたんだろ? よくあることじゃねえか、あっちだって素人じゃないんだ」


 ただの愚痴か、とアレッドが張っていた気を緩めるも、ルーアの口調は変わらない。


「問題なのはここから、それで今度はとある筋から情報が入ってきて」

「何だよ」

「その密会、ファッフルで行われてるみたい」

「……何でまた」


 アルスぺリア国内に街は数あれど、ここまでの田舎を密会場所に選ぶ変わり者はそうはいない。

 政治家などが来ればそれだけ目立つ上に、首都にそれなりに近い為にマスコミもすぐに嗅ぎ付ける。早い話が、密会場所としては完全に不適格。


「分かんないけど、場所として不自然だから不気味。私も行くけど、アレッドどうする?」

「どうするって、俺が動いて問題ないのか?」

「寧ろ、上はアレッドに動いて欲しがってる」

「どういうことだよ?」


 アレッドがイレイフ近辺にいる事は彼らも承知済み。彼らにとってもある種、厄介な存在であるはずのアレッドを頼らざるを得ない状況が思い浮かばない。


「密会してる一人はアルスペリア外務局国際情報統括官エナード・バルス」

「知らないけど、何してる人なんだ?」

「エクスぺリアに対して裏で色々と手を回してるって認識でいい、手強そうなのはそいつの密会相手」

「とんでもない大物だった拒否するからな」

「スパイラルアーツ、アルスペリア支部の調整者の一人みたい。特定まではできてないけど、アレッドに動いて欲しい理由も察しが付いたでしょ」

「……どうしてそんなのに俺が動かなくちゃいけないんだよ」


 察しは付いたものの、それだけにアレッドの気は乗らない。要するに、毒をもって毒を制しようとしているだけだ。


「それだけ厄介ってことでしょ?」

「AC課とかAG課に要請も出てないのか?」

「出てない、完全にアレッドを個人を指名してる」

「分かったよ、場所は?」


 完全に厄介払いを任された形だが、ここまで舞台が整っては断る理由もなく彼はあっさりと白旗を挙げた。

 ここで断ったところで今度はアイファかノエルあたりから要請がくるだけだ。


「それもまだ、だから私が行くまでどこかで時間潰してて」

「時間ね……どれくらいで着く?」

「もう動いてるから、1時間くらい。遅くても昼前には着くから」

「了解、じゃあそれ位に」

「事件?」


 シイルの表情もまた諦めに近いもの。少し力が込められた彼女の頬をぽんと叩いて、アレッドは走り出した。


「ケーキ、皆で食べておいてくれ。早く終わったら顔を出すから」

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